「修理する権利」について話をしましょう。
修理する権利のアクティビズム

「修理する権利」について話をしましょう。

自分でお金を払って手に入れた製品が壊れてしまったら、好きなように修理ショップに持ち込むか、自分で修理する権利があるはずです。しかし現実は、スマートフォン、トラクター、車椅子など、さまざまな製品のメーカーが、ユーザーの修理する選択肢を不当に制限し、修理価格を釣り上げ、修理自体を困難なものにしています。

修理する権利は、修理の多様なオプションを確保し、修理を制限するシステムから守るための国際的な取り組みです。修理する権利の法制化を目指すために3つの根幹となる目標があります。それは所有するガジェットの内部を自由に開く権利を守ること、必要なパーツや工具を入手できる機会を拡張すること、独立系修理ショップをビジネスとして維持することです。

ご存知ない方のために、先日、ニューヨーク州では史上初の電子機器を対象とした広範な修理する権利の法案が可決されました。いよいよ来年から、ニューヨーカーたちはあらゆる種類の電子機器のパーツ、ソフトウェア、修理マニュアルにアクセスできます。修理する権利の支持者たちは、ニューヨークだけでなく世界中の人々も同様にアクセスできるようになるべきだと考えています。 

ツールなしで携帯電話のバッテリーが交換でき、家電製品には回路図が付属していた時代は、それほど昔のことではありません。しかしながら、私たちが気づかない間に、計画的陳腐化という企業戦略が主流になっていきました。

メーカー側が「修理する権利」に反対する理由は単純明快です。修理をコントロールすれば、企業収入を増益することができます。例えば、ユーザーがメーカーが指定する修理代理店のサービスを利用するとき、一般修理ショップが修理用パーツを入手できないとき、もしくはユーザーが壊れたものを修理する手間が面倒で、最終的には新品を購入する時、利益はメーカー側に流れます。

修理は平均的な仕事の6倍も安全で、独立系修理技術者はメーカーの技術者と同様の訓練を受けた経験豊富な労働者たちですが、メーカーはユーザーの安全を確保するためと応戦するでしょう。米国連邦取引委員会(FTC)の調査では、独立系修理ショップが信頼性や安全面に欠けることを示すものは何も見つかっていません。これに対して、メーカーは顧客データの保護という名目を作るでしょう。スタンフォード大学とジョンホプキンス大学のサイバーセキュリティの専門家が、「第三者による修理にサイバーセキュリティのリスクはない」という結果を公表したにもかかわらず、メーカー側はデバイスのセキュリティに配慮していると主張します。おそらくそうなのでしょう。あるいは、ただただ修理を妨害したいだけかもしれません。

製造メーカーにお勤めの方は、より修理しやすい製品を作るにはどうすればよいか、ぜひこの機会に考えていただければと思います。

シェイディー(陰湿)な対リペア戦略

ここでは、製造メーカーがコントロールして、消費者に新製品を買い続けさせるための、陰湿な対リペア戦略について詳しく説明します。

交換用パーツ、ツールや修理マニュアルへのアクセス制限

多くの製造メーカーは、交換用パーツやツールの販売を制限し、自社で認可した修理代理店/工場以外には提供をしていません。このようなコントロールは修理市場の独占を生み、リペア業界から独立修理ショップを締め出し、製造メーカーが人為的に高い修理代価格を設定することに繋がります。破損したスマートフォンのスクリーン修理が、新品の半額程度の料金になることが多いのは、偶然ではありません。いわゆる「50%ルール」は、消費者の多くが修理ではなく買い替えを選択する、作為的な(よく引き合いに出される)ポイントです。また交換用パーツの提供をコントロールするだけでなく、取扱説明書の公開も拒んでいます。修理マニュアルが未公開であれば、DIY修理がより難しく、作業に危険性が伴います。

非正規パーツの締め出しとロック

純正パーツへのアクセスを制限したり、非正規の修理オプションを妨害する以上に踏み込む製造メーカーもあります。HPは偽のエラーメッセージを使って非純正のインクカートリッジを妨害していたことが発覚し、HPプリンターのユーザーに高額な和解金を支払う結果となりました。Appleは非純正のiPhoneパーツをインストールした場合、ロックスクリーン上に”正規のパーツをインストールしていることが確認できません。”という警告が表示され続けます。世界最大の農業機械メーカーJohn Deere社は、トラクターのソフトウェアエラーが表示されると、修理サービスプロバイダー専用のソフトウェアでエラーが解除されるまで、低速走行の「リンプモード」状態に置かれます。このようなやり場のない警告や人為的な機能制限は、第三者が施す修理への信頼を損なわせ、ユーザーはメーカーが独占する修理の管理下に追いやられていきます。

マザーボードとパーツのペアリング

修理を阻止するための効果の高い戦略は、デバイスに搭載されたマザーボードとパーツをペアリングすることです。破損したパーツを新しいものに交換すると、マザーボードがそれを拒否します。従って、修理を成功させるには、新しいマザーボードとペアリングされた新しいパーツを入手するしか方法はなく、修理はより高価で複雑なものとなります。このようなパーツを初めて見たのはXbox 360で、ゲームディスクドライブとマザーボードをペアリングさせることで、ディスクドライブの修理費用を10倍に押し上げました。それ以降、多くのメーカーがこの方法を使って、個人の修理を妨害するようになりました。Appleのセルフサービス修理プログラムは、パーツをデバイスのシリアル番号にロックするため、個人レベルの修理や使用済み製品の再生を劇的に制限します。一方で、製造メーカーは交換済みパーツを再コード化して、承認作業を済ませます。正規の修理代理店は、ペアリングソフトウェアを使用して同じ承認作業を行います。このペアリング用ソフトウェアへのアクセスを限定することは、修理を独占維持できる一つのやり方です。

修理不可能な製品をデザインする

製造メーカーが施す修理できない設計は、作業を妨げたり、修理する気力すら喪失させます。例えば、独自のネジ頭が使用されていれば、対応するツールを特注しなければなりません。また工業用接着剤でバッテリーが固定されていると、バッテリーの交換といった基本的なメンテナンスが非常に難しくなります。他にも、様々なコンポーネントが不揃いのアセンブリに半田付けされています。壊れたキーボードのキーを交換するために、トップケースを丸ごと交換しなければならない例もあります。

「修理する権利」法案の種類  

このような障壁を乗り越えるために、私たちは世界中で「修理する権利」を勝ち取り、幾つかのカテゴリーに分類される法案が制定されるべく戦っています。

パーツ、ツール、マニュアルにアクセスできる法律

最初に制定された修理する権利は、2012年にマサチューセッツ州で制定された「自動車オーナーのための修理する権利」で、オーナーが自分の選んだディーラー/整備工場で修理できる権利を保障するものです。この法律が成立した後、自動車メーカーは修理擁護団体との交渉テーブルにつき、2014年には、米国内の全自動車オーナーが自分の車の部品、専用ツール、マニュアルにアクセスできる権利を保証する覚書をまとめました。

それ以降、ニューヨークで可決された法案を含め、アメリカ国内で提出された修理する権利法の多くは、このモデルに基づいています。現在、アメリカ50州のうち38州で審議されており、この大部分が所有者や独立系修理ショップがパーツ、ツール、マニュアルを利用できるようにすることを目的としています。コロラド州では、電動車いすの”修理する権利”の法案が可決されたばかりです。 

現在、米国連邦レベルでは、電子機器トラクターについて、パーツとツール、マニュアルの提供を求める法案が検討されています。  

リペアビリティのラベル表示法

私たちは長年に渡って、電子機器のリペアビリティを評価、公開し、消費者に対して購入を検討している商品が修理可能なものかどうか注意を促してきました。立法機関もこの呼びかけを参考にしています。 

フランスでは、2021年から5つのカテゴリーに分類された家電製品のリペアビリティスコアの表示を、販売時に義務付けるようになりました。Samsungが委託したOpinionWayの調査によると、2021年半ば時点でフランスの消費者の大多数がリペアビリティ導入を認知しており、より修理可能な製品を購入するために参考にすると回答しています。一方、米国ワシントン州では2022年に電子製品のラベル表示法が提出されましたが、残念ながら通過しませんでした。

French repairability scores, in a row
フランスの製造メーカーは販売時にこれらのリペアビリティスコアの表示が義務付けられています。

EnergyStar社が消費者に生涯消費エネルギーコストを公開するように、消費者はどの程度修理が可能かを知る権利があります。フランスのリペアビリティ評価システムは、EnergyStar社の評価と同様に、3次的なデバイスのコストを消費者に考慮する機会を与えて、ポジティブで持続可能なイノベーションを促進します。

著作権法

修理する権利の戦いの裏側で、行き過ぎた著作権法により、様々な修理が妨害されています。1998年に制定されたデジタルミレニアム著作権法は、「技術的保護手段の回避」を違法としました。つまりソフトウェアロックやパーツのペアリングシステムを潜り抜けようとする人は、修理を目的としても著作権法違反ということになります。米国議会図書館は、この法律に対して個別修理の免除を認めていますが、新しいパーツをペアリングするために必要なソフトウェアツールの配布は対象外とされています。2022年、米国議会は乱用されるこの著作権法に対して、法律を修正する作業が始まりました。カナダにも同様の著作権法があり、2021年に国会議員のブライアン・メイがこれに意義を唱える法案を提出しています。

そもそも著作権とは、不正な複製から著作物を保護するためのものです。修理の阻害は、知的財産法の範囲から大きく外れています。一方で製造メーカーは、ソフトウェアロックへのアクセスを消費者に与えることは海賊行為につながると主張してきました。しかし著作権の管理機関は、このような懸念は “立証されていない “とし、その主張を退けています。修理を阻むデジタルミレニアム著作権法を改正しても、海賊版が合法になることはありません。企業は自社製品の違法コピーを引き続き訴追することができます。フォーダム大学法学部のLeah Chan Grinvald教授とOfer Tur-Sinai教授は、Fordham Law Reviewの論文で、”知的財産法が修理する権利の施行を妨げるに値しない”と主張しています。

創造力の豊かな人は、その想像力を使ってお金を稼ぐことができるでしょう。しかし、著作権法を使って修理を妨げるなら、著作権自体の目的を歪めてしまいます。

製品デザイン法

今のところ、デバイスの修理しやすさを義務付ける法律は導入されていませんが、私たちの未来で叶うはずです。2022年2月、欧州議会はユーザーによるバッテリー交換を可能にする義務付けに賛成票を投じました。この投票結果から法制化までには、踏まなければならない段階がありますが、EU圏内で販売される製品はユーザー自身で交換可能なバッテリーを搭載する法律が施行される可能性があります。

未来は修理可能にあります 

修理は節約につながり、環境保護にも役立ちます。そしてガジェットがどのように動作しているのか、そのしくみを教えてくれます。グローバル社会の中で、今まで通り大量生産を続けていく余裕はありませんし、同時に大量廃棄を続けることもできません。

法的に保護された「修理する権利」は、私たちが自分のものを適正な価格で修理できるようにするものです。それは、雇用を生み出し、修理業界の健全な競争が進みます。修理可能なものを選ぶという私たちの可能性が広がります。修理する権利は未来であり、それは正に理に叶う権利です。

共に修理する権利のために闘いませんか?米国内ではThe Repair Association、欧州ではRepair.eu、カナダはCanRepair、オーストラリアはThe Australian Repair Networkの活動をご覧ください。

翻訳:Doi Midori