新製品の発表がある毎に、レビュアーたちは何か面白い話がないかと躍起になりますが、iFixitのエンジニアたちは分解の事前準備を開始します。あらゆるものオンライン修理データベースを提供する私たちは、カメラのスペックや充電時間の噂よりも、デバイスの構造に関心を持っています。どうやって侵入するか?消耗品であるバッテリーへのアクセスは容易になったか?修理のしやすさは?分解するために新しいドライバーが必要か?最近のハイテクは反復的で、それほど新境地を開拓しているわけではありませんが、それでも私たちは同じ質問を繰り返します。
ここでは、修理がほぼ確実にできるものと、修理ができずに製品が埋め立てられる可能性が高いものを3つずつ紹介します。
修理可能な製品の特徴トップ3

マニュアル、マニュアル、そしてマニュアル
マニュアルは製品を手にしてから最初のファクターに過ぎませんが、とても重要な要素です。例えば簡単な作業でも意外と間違えてしまうことがあります。ゆで卵を例に考えてみましょう。お湯の中に卵を入れて、沸騰させるだけの簡単な作業を思い浮かべるでしょう。しかし意外にも、私たちは簡単にミスを犯してしまうことに驚くでしょう。鍋に十分な水を入れずに卵を爆発させてしまい、寮全体の火災警報を鳴らしてしまった人はあまりいないかもしれませんが、爆発後のゴムのような残骸に頭を抱えた人はいるでしょう。


デバイスの修理も同じです。作業前に正しいレンチを準備したり、ケーブルを切断しないように注意情報が入った修理マニュアルがあれば失敗を未然に防ぐことができます。つまり、どんなに複雑な修理でも詳細な説明があれば方法が分かります。逆に修理ガイドがなければ、修理中のPadから30メートル圏内には誰も近づかせることができません。確かに修理は可能ですが、楽しいものではありませんし、非常に面倒なことになる時もあります。
マニュアル情報は修理を遂行する上での基礎です。iFixitのコミュニティや修理の世界全体は、修理情報のギャップを埋めるために素晴らしい仕事をしています。私たちが提供している修理ガイドは、多くの場合、様々な試行錯誤の末に作られたものです。そして修理マップの最も厄介な部分に「here be dragons (ドラゴン発見)」と書き残すこともあります。そのドラゴンとは、ケーブルの配置が悪い注意喚起です。
何百万台ものデバイスを組み立て、分解するのは製造メーカーです。品質保証に失敗した製品を作り直し、保証期間中の欠陥を修理し、返品された製品内部を調べています。不具合がどこにあるか知っているのなら、事前にユーザーに警告べきです。DIY修理の多くは、過去に修理した人たちの犠牲の上に成り立っています。つまり、最初に誰かが失敗した分解と解体情報によるものです。だからこそFrameworkやFairphone のような企業は、すべてのユーザーを保護する製品を作ってくれています。これは素晴らしいことです。
パーツのサプライ
電源を切ってから再び電源を入れるまでの修理には、多くの場合、知識だけでなく部品が必要です。ある会社では壊れたものを修理する唯一の方法は、壊れたものとは違う箇所が壊れた製品を買って、壊れていない部品を入れ替えて、フランケンシュタインのような新しい製品を作り出すというところもあります。”部品”のみ販売されているリストをみたことがありますか?つまり修理できるチャンスを逃してしまったものということです。誰かが自分で修理できず、部品というテクノロジーの死体の一部を臓器ドナーとして提供したのです。なんだか暗い話ですよね?

間違いなく、いつ、どの部品が、どれだけ必要なのか、部品の流通は大変です。でも考えてみてください。10万円以上する携帯電話を廃棄するのと、3000円を払ってスピーカーを交換するのは、どちらがいいでしょうか?3000円を節約して、代わりに沢山のまだ使える小さな製品を埋立地に廃棄する。これが当たり前だと考えるのはやめましょう。逆に廃棄とは苦痛を伴う作業であるはずです。なぜなら、スペアパーツや手頃な価格で破損したデバイスのドナーを探すのはどんなに頑張っても不可能に近いことも原因の一つです。特に壊れたデバイスは同じ箇所が壊れることが多いため、ある修理店の倉庫にはディスクドライブが壊れたPS4で一杯になっています。私たちが抱く落胆は、メーカー側にとって有利に働きます。「新しい携帯電話を買う方が簡単ですよ」と彼らは耳打ちしてきます。確かにそうかもしれませんが、従う必要はありません。
自動車やPCは昔からスペアパーツ市場が充実していました。ビデオゲーム業界もValve社のおかげで同じような変化を始めています。さらに修理の権利の広がりにつれて、他のメーカーにも部品提供の圧力がかかり始めました。
あなたはおそらくこう考えるかもしれません。自分で修理するつもりもないのに、なぜメーカーが部品を供給するかどうかが重要なのか。古くなった携帯電話をリサイクルして、新モデルにアップグレードすれは良いのではないか、と。しかし、修理はあなたが思うより簡単です。もしくはテックに詳しい友達がいれば助けを求めることができます!そして残念ながらリサイクルは、考えられているよりグリーンな処理ではありません。

リサイクルは最後の手段であるべきです。リサイクルとは、製品のライフサイクルにおける最後のあがきであり、テクノロジーの「石の塊」から最後の一滴を搾り取るだけの手段です。製品の環境負荷の多くは製造過程に集中しており(携帯電話の製造は34年間使用した場合と同量のエネルギーが必要)、そのコストを軽減する最善の方法は、耐用年数を長くすることです。つまり、より長く使用期間を伸ばし、より多くのユーザーの手に渡ること、そして修理の回数を増やすことです。リサイクルには多くのエネルギーと輸送が必要で、処理には多くのロスが伴います(処理できたとして)。まずバッテリーを取り出して処理しなければならないため、作業に時間がかかりすぎると処理費用が高額になります。バッテリーを取り出せない場合、引火する恐れがあるためシュレッダーで処理することもできません。その場合は倉庫に保管して、後で解決策を見つけるか引火性危険物対応の清掃員が回収しにくるまで待つことになります。つまりリサイクルとなれば、修理できるデバイスの山から取り出され、資源を大量に消費する新製品の製造に再利用されます。
再利用可能な留め金: 開いた口は塞がなければならない
デバイス内部への侵入方法を探して修理することは重要ですが、元の状態に戻すことができなければ全てが無意味です。新しくバッテリーを交換するのもよいですが、作業後にスクリーンも正常に使えるように戻さなければなりません。そのためデバイスを密封して固定するベストな方法は、留め金を使うことです。外したネジを元の位置に戻すだけです。つまり接着剤は使わない、プラスチッククリップは使わない、昔ながらのネジで留めるということです。
私たちが遭遇した最初の、そして最も厄介な敵は接着剤です。接着剤には、非常に作業が困難で永久的に圧着するエポキシ樹脂から、そこそこ便利なストレッチリリースタイプの接着ストリップに至るまで、さまざまな種類のものがあります。しかし接着剤を剥がした後、デバイスを元の状態に戻すことはできません。参考までに、SamsungのGalaxy Foldはエポキシ系の酷い接着剤が使用されていて、iPhonesや HPはストレッチリリースタイプの接着剤が使われています。

一度剥がした接着剤は交換する必要があります。接着剤を剥がした後も頑固な残留物が残るので、それを完全に除去しなければなりません。つまり、この作業を正しい方法で試みると多くの時間を費やすことになります。しかし以前と同じ密封性は決して得られません。結局のところ、私たちはロボットではないからです。私たちのお気に入りで名誉ある再利用可能な接着剤は、ストレッチリリースタイプのプルタブです。タブを引っ張ればストリップ全体が綺麗に出てきます。タブの装着も簡単ですが、一方で耐用年数が長くなればなるほど、引っ張る途中でストリップが切断しやすくなります。接着剤は重要な役割を果たすので、新しいものに交換する価値はあります。とはいえ、この接着剤ストリップを使用した修理が耐え難いほど困難なものであってはなりません。そして、メーカーには代用方法があります。
場合によっては、プラスチッククリップは再利用可能な素晴らしいファスナーです。クリップを使えば、取り付けが簡単で後片付けも不要です。通常は元通りに戻せますが、プラスチックは他の素材以上に使用環境とエントロピーという要素にさらされます。プラスチックは熱を加えるともろくなり、曲げれば曲げるほど壊れやすくなります。PCのノートパソコンをお持ちの方は、すでにご存じかもしれません。クリップを外すのは簡単ですが、あの小さなペグが折れてしまうこともあります。しかも接着剤ストリップとは違い、クリップは新しいものに交換ができません。幸いにもクリップは直列に並んでいることが多く、壊れてしまったクリップは隣のクリップがカバーしてくれます。
最後にネジの話をしましょう。iFixitのロゴだけでは分からないかもしれませんが、私たちはスタンダードで引き出しに必ず1本はあるドライバーとそれに対応するネジがお気に入りです。ネジは無限に取り付け、取り外しができるように設計されており、どんなものにでも使用されていて、極小ネジに作り変えることもできます。私たちの考えに大きく頷いてくれたのはMicrosoft Surface Pro 2です。

ネジはもう少し減らせるのでは??
しかしながらネジには限界があり、ネジ山が潰れたり(潰れてしまえば取り外しができない)、デザインに合わせた形状が必要になります。(ネジ穴の奥までしっかり入り込ませるためのカラーが必要)ネジはスピーカーバイブレーションなどの要因で、時間の経過と共にネジが緩んでくることがあります。ネジロック剤と巧妙なエンジニアリングのおかげで、この欠点が解決できますが、適度な強度と量の接着剤はネジに比べて優秀です。覚えていただきたいのが、ペンタローブやトライポイントネジといった特殊ドライブの使用は、デバイス内部へのアクセスを拒否しているということです。メーカーはユーザーたちの手を締め出すために特殊ネジを使用しますが、外すという意志があれば、ネジを取り外せるやり方は存在します。修理とは、それを見つけることです。
製品デザインの失敗例ワースト3

配慮されていない内部デザイン
最も苛だたしいのは、バッテリーとスクリーンの修理が配慮されていないデザインです。ポータブルデバイス、正確に言うと最近の電子製品で最も修理の頻度が高いものは、スクリーンとバッテリーです。スクリーンは壊れることがあります。デバイス内部がしっかり密封されて正常通り動いても、バッテリーは消耗していきます。死んだリチウムイオンバッテリーの寿命を縮めることはできませんが、再度大切なことをお伝えしましょう。バッテリーは消耗品です。

もしあなたがハードウェアエンジニアなら、バッテリーは取り出しやすいデザインであるべきで、スクリーンの故障や交換も考慮しておくべきです。そして、もし私たちがあなたの壊れたデバイス内部を開いて、幾層にも重なったケーブルや三次部品が優先度の高いパーツの上に搭載されていれば、アクシデントで周辺パーツを破損してしまうでしょう。
テクノロジーの設計では、様々な配慮が必要です。ワイヤレス充電のコイルやアンテナにアクセスしやすくする必要があること、ボタンやスクリーンのハードウェアも必要です。かつてのバッテリーはツメを外せば取り出せるデザインだったのを覚えています。そして私たちの不満とは裏腹に、iPhoneは親指の爪で簡単に素早く取り外せるべきという原則に基づいて設計されていることも知っています。だから、このようなデザインは可能です。ハードルはそれほど高くはありません。
会社を強くするマーケティング、弱くするマーケティング
実際にエンジニアはバッテリーがいずれ消耗することを十分承知していながらも、2年もしくは3年もつデバイスの寿命を考えているので、消耗は問題になりません。必要なのはマーケティングの要件を満たすことです。そして研究ラボで全てテストします。ガジェットは、ベタベタした幼児の指や、砂だらけのポケットという使用環境を考慮したデザインではありません。2代目、3代目、4代目のユーザーを配慮してデザインするわけでもありません。つまり現実世界のためにデザインしているわけではないのです。折りたたみ式携帯電話の市場を見れば、よくわかるはずです。
計画的陳腐化とは、複雑な概念です。メーカーはユーザーの携帯電話がシャットダウンして新モデルに買い換えるまでの時間をカウントダウンしているのでしょうか?いいえ、そんなことはありません。しかし数年後に急速に老朽化するバッテリーが搭載されています。そしてAppleは落下に強い耐久性、防水性能、(話題になった)オートバイに装着してナビゲーション機能を使えることを自慢しながらも(本当ではありませんが)、細かいメンテナンス方法付きの複雑なテクノロジーを販売しています。
融合されたパーツ

そして、最後の両刃の剣は「統合された部品」です。世界が融合されたガラスとデジタイザの乖離をやめてしまった時、私たちはかなり深刻な不満を抱きました。スクリーン交換の修理代が高騰したためです。しかし、それは未来に向かう道であり、それを受け入れるしかありません。結局のところ、2つも3つも部品を外していた所が、1つで済むようになったということは、修理が簡単になったと言うことです。また半田付けされたRAMのようにテクノロジーは急速に進化しましたが、アップグレードとは無縁です。私たちはハンダ付けされたストレージとCPUがプライバシーと耐用年数にとって悪夢になると心配していますが、いくつか繰り広げられている戦いでは、次に何が起こるか様子を見ることにしています。
他にもメイン基板にバッテリー、ボタンケーブル、充電ポート、ヘッドホンジャックがハンダ付けされています。これでは、ただの安物買いの銭失いになってしまうのは明らかです。ヘッドライトが切れたら、自分で交換すれば良いはずです。もっと言えば、電球を交換すればいいのであって、ヘッドライトと一緒にフロントガラスやフロントタイヤを交換する必要はないはずです。同様に「R」キーが故障したらキーボードを交換するか、いっそのことスイッチそのものを交換すればいいのです。 そうすれば交換用のバッテリーや上部ケースを買い揃える必要はありません。
TL;DR

修理可能なデバイスのハードルは、悲しいほど低いものです。私たちが求めているのは、6つの点です。
- モジュール性
- 実際に使用に即した配慮
- 優先されたデザイン
- 再利用可能な留め金
- 交換パーツの入手のしやすさ
- 無料でオープンアクセス可能な修理マニュアル
この6点は全て、以前からメーカーも行なってきた内容です。修理する権利が米国の法律として制定されれば、法的に義務づけられるようになります。製造メーカーの皆さん、聞いてください。これは正しいことだけではありません。将来的には経費節減に繋がり、売り上げを向上させることにも繋がります。
そして消費者の皆さん、派手な新製品の発表を見た後、年末の自分へのご褒美を考え始めたら、自分の内側にいるiFixitエンジニアにそのテクノロジーを使わせてみてください。修理できるか?長持ちするか?製造メーカーの先見性に感謝するかどうか?それとも、自分は騙されないと思い留まりますか?
もし本当に新しいカメラが欲しいのなら(出産を控えている人は、素直に買うことをお勧めします)、質の悪いものを選ばないように、新しいバッテリーの時期が来たら、思い出してください。私たちはいつでもここにいます。
翻訳: Midori Doi
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