iOS 18が月曜日にリリースされ、待望の新機能「リペアアシスタント」が登場しました。AppleはiPhone 15に加えてiPad Pro M4、iPad Air M2のユーザー向けに、修理ソフトウェアをデバイス上で利用可能にするという約束をついに果たしました。(ただしWi-Fiが必要です)もちろん、これは私たちも試さなければなりません。
私たちの初期テストの結果に基づくと、Appleが目指している方向性を評価します。しかし、現時点では非常にバグが多いという課題に直面しています。
閉鎖的エコシステムの歴史
Appleが2022年に純正パーツの販売を開始して以来、DIY修理をサポートするために、デバイス上で修理ソフトウェアを提供するよう呼びかけてきました。これまでの2年間、セルフサービス修理プログラム(日本での導入は未定)を通じて部品を購入した場合、Appleサポートスタッフとのチャットや電話を介して修理ソフトウェアによる修理を完了しなければなりません。その際、Apple IDとパーツをペアリングするために、IMEI (識別番号)や請求書番号、さらには利用規約への同意が求められます。
このプロセスを省略したり、セルフサービス修理プログラム以外で購入したパーツを使用した場合、問題が発生する可能性があります。例えば、このチャットアシスタントを利用しないiPhone 15の修理では、複数の部品が正常に機能しなくなることがあります。もちろん、私たちはこの部品ペアリング問題に対して強く反対しました。そんな中、今年、オレゴン州とコロラド州は、今後数年以内に部品のペアリングを制限する「修理する権利」法案が通過しました。
Appleが今年4月に、年内までに部品ペアリングシステムの変更を発表した際、私たちはその発表は十分でないと感じていました。
そんな折に、Appleがセルフサービス修理プログラムを通じて購入していない純正パーツに対してキャリブレーション(再調整)を開放すると聞いて驚いたのは言うまでもありません。さらに、Appleが修理ソフトウェアを一般ユーザーに提供する予定だという構想には大いに期待し、できればそれがデバイス上で利用できることを期待しました。
その後6月にAppleが発表したホワイトペーパーで、iOS 18でサードパーティ製のパーツに対してTrue Toneやバッテリーヘルスの表示を無効にしないと明言したときは、心踊りました。
それでもなお、リペアアシスタントはサードパーティ製部品に対して「修理完了」という機会を与えないだろうと半信半疑でした。また、他のデバイスに対するパーツペアリングの制限についても気になっていました。(結果は、iPadは対応するが、MacBookは対応しない)そして、Appleがリサイクル業界に問題を引き起こしている「アクティベーションロック」機能を、個々のパーツにまで対象を拡大する予定という発表には懸念を抱きました。
リファービッシュ業者(整備品販売業者)はアクティベーションロックを忌み嫌う

アクティベーションロックや、Samsungのリアクティベーションロック、Google、Motorola、LGのファクトリーリセットプロテクションロックといった同様のシステムは、中古デバイスの再利用における最大の障壁となっています。これらのシステムが正しく機能すれば、盗難被害の抑止力になる一方、正常に動作するデバイスがシュレッダーにかけられてしまうケースが多く、つまり材料やエネルギーの大きな浪費であり、温室効果ガスの排出に繋がります。
問題の根本は、デバイスを売却もしくは寄付する際に、多くの人々がソフトウェアロックを解除する習慣がないことです。その結果、リファービッシュ業者やリサイクル業者には、盗難防止機能がオフにされていないため、再利用できない大量のスマートフォンやラップトップが届きます。これらのデバイスは完全に正常に動くにもかかわらず、使用できません。アクティベーションロックを個々の部品にまで拡大すると、この問題はさらに深刻化します。
MacBookのリファービッシュ業者であるジョン・バムステッドは、アクティベーションロックの拡張について次のように述べています。
「アクティベーションロックがかかっているデバイスは、パーツの供給源として再利用できません。デバイス内のすべての部品が死刑宣告を受けたようなものです。アクティベーションロックとパーツのペアリングは、今や悪のために手を取り合って連携しています。そしてAppleは、わずかな数のアンロックされた中古パーツのペアリングを許可しているという点を、あたかもポジティブなことのように宣伝しています。」
Fight to Repairのポール ロバーツは「その現実的な結果は、小規模の独立系修理業者にとって壊滅的なものになりかねない」と警笛を鳴らしています。
それでは、理論上は大きな問題がありますが、実際の現場ではどうでしょうか?システムの性能はどう影響するでしょうか?
実際に試してみた
iFixitの分解テクニシャンであるシャフラム・モクタリとリペアビリティエンジニアのカーステン・フラウエンハイムが、このシステムをテストしました。シャフラムは2台のiPhone 15 Proを、カーステンは2台のiPhone 15を使って、基板を交換してあらゆる部品の交換をシミュレーションしました。これは、新しいiPhoneが登場した際に、iFixitがパーツのペアリングの影響とその程度を調査するために行う通例の手法です。
シャフラムの結果: ブートループが頻発し、Face IDが無効化

シャフラムは、iOS 17.1がインストールされた2台のiPhone 15 Proから作業を始め、1台の基板を取り出して、もう1台のiPhoneに入れ替えました。デバイスは正常に起動するものの、予想通り、バッテリーやスクリーンなどに関して、不明なパーツの警告やポップアップが表示されます。「バッテリーのヘルス状態」が非表示、「True Tone」オプションが無効化されるパーツペアリングの問題が発生しました。
その後、シャフラムはiPhoneをiOS 18にアップデートしました。すると、”交換した”全てのパーツがサービス履歴に表示され、修理を完了するために診断モードで再起動するオプションが提供されました。

そこで問題が発生し始めました。2回にわたってiPhoneは”ネットワークエラー”のため再起動に失敗しました。再起動が成功した後、”交換した”全てのパーツが識別され、数カ所のパーツに対してキャリブレーションが要求されましたが、Face IDは(予想通り)エラーが表示されました。シャフラムはカメラのキャリブレーションから始めましたが、キャリブレーションの開始前に、iPhoneが再起動しました。
何度もキャリブレーションを試みましたが、同じループから抜け出せません。キャリブレーションをしようとすると、デバイスを再起動させるだけです。診断モードで”修理を完了”を押すと、何度も”診断または修理”の画面に戻されました。再起動するための唯一の選択肢は、”診断を終了する”だったのです。

シャフラムがカメラを「新しい」基板にペアリングされたカメラに交換したところ、Face ID修理のプロンプトは消えました。しかし、フロントカメラが動作せず、Face IDが完全に無効になりました。そして、修理サービスのためにiPhoneを正規サービスに持ち込むようウェブページへのリンクが表示されました。
一方で、他のキャリブレーションのプロンプトは、終わりのない再起動ループへと送り続けました。
しかし、彼には最終的な解決策がありました。つまり、元の基板に戻すことでした。これを実行すると、再起動ループは止まり、起動後、部品交換の履歴は消え、「修理完了」のオプションもなくなりました。結果として、基板の交換(と再交換)の記録が一切残っていない状態のiPhoneが手元に残ります。
しかし、修理を行う多くの人々は、元の状態にデバイスを戻すことができる機会を持つわけではありません。
「このアップデートを『ウィリアム・ウォレス・アップデート』と呼ぶことにします」とシャフラムは言いました。これは映画『ブレイブハート』で有名なスコットランドの自由戦士、ウィリアム・ウォレスからの引用で、彼は自由を貫きながらも残酷に処刑されたことに由来しています。「パーツのペアリングからの自由を意味しますが、その代償は非常に大きいからです。」
カーステンの体験:”良い点が悪い点を上回る”
次に、シャフラムの体験を再現できるか確認しなければなりません。そこで、カーステンが、Proの代わりにベースモデルのiPhone 15、2台を使って試してみました。基板の交換を行う前に、両方のデバイスをiOS 18にアップデートしました。

最初はまるでデジャブを見ているかのようでした。すべての部品がサービス履歴に表示され、修理を完了するよう促されます。しかし、そのシステムを進めようとすると、繰り返しネットワークエラーが発生しました。
3回目で、ようやくデバイスは再起動しましたが、キャリブレーション中は何も起こらず、まるで何事もなかったかのようにアップデート前のiOSに戻りました。4度目のテストは再起動した後、白いローディング画面が無限に続きました。
それからカーステンは診断モードを終了し、Wi-Fiネットワークを切り替えてみました。iFixitのオフィスには、ログインポータルが必要なネットワークと、必要ないネットワークの2つがあります。カーステンは、診断モードがログインポータルをうまく処理できていないのではないかと仮定し(そうすれば白いローディング画面の説明がつく)、別のネットワークに切り替えることにしました。
予想通りに設定が進み、背面ガラスと背面カメラの両方に、修理の成功を示す緑色のチェックマークが表示されました。Face IDには黄色の警告アイコンが表示され、ディスプレイとバッテリーは両方ともAppleアカウントにアクティベーションロックされていました。(面白いことに、両方のiPhone所有者は同一のアップルIDでした)修理を完了するためにログインすると、アクティベーションロックの警告は消え、ディスプレイとバッテリー両方のロックが解除されました。
Face IDはキャリブレーションが必要と表示されたものの、「修理を完了する 」手順を進めてもそのオプションはなく、「このパーツは正常に機能していません 」といったエラー表示が出るだけです。さらに、iOS 18に再起動して通常通り使用すると、セルフィーカメラも全く機能せず、カメラアプリに真っ白の画像が表示されるだけでした。
「これはいずれ機能するように設定されているように見えますが、AppleはまだFace ID機能をカメラ交換時に有効にするスイッチを入れていないようです。2024年のどこかでこれが有効になると示唆していましたが、まだのようです」とカーステンは推測します。
シャフラムと同様に、カーステンは工場出荷時のペアリングされた基板を再インストールしたところ、結果は同じでした。サービス履歴の表示もカメラの問題もなく、正常に動作していました。試しにセルフィーカメラのみを交換し、何が違うかを確認しましたが、基板全体を交換したときと同様に、Face IDのキャリブレーションができず、依然としてセルフィーカメラは機能しませんでした。
カーステンの見解:「リペアアシスタントはうまく機能し、最終結果はとても良いのですが、この初期リリースではかなりバグが多いです。Appleは今でも修理を優先事項にしていないように見えますが、Face IDの交換が可能になり、明らかなバグが修正されるのを楽しみにしています。」

一言:オンデバイスのリペアソフトは素晴らしいですが、現時点ではバグが多すぎて許容できません。

Appleがユーザー向けに、パーツのペアリングやキャリブレーションソフトウェアをリリースしたことを、非常に嬉しく思っています。この変化は長い間待ち望まれてきたもので、リペア業界全体にとって大きな前進です。独立系修理ショップは、Apple純正のオリジナルパーツを利用できるはずです。(ただし、リサイクル業者によると、リサイクル業者によると、アクティベーションロックがかかっていない場合に限ります。これは重要な例外です。)また、ユーザーは自分のデバイスで行われた修理履歴を持つことができ、それが再販価値の向上にもつながります。
修理のユーザー体験がより透明化されるのは喜ばしいことです。以前は曖昧で執拗な『未確認の部品』警告が、ユーザーの手を修理から遠ざていましたが、部品情報は設定内に埋め込まれており、『押し付けがましくない』とカーステンは指摘しています。この新システムは、修理履歴が『恐怖を与えるよりも、有益な情報』の形で表示されます。
しかし、現在のリリースはバグが多く、現時点ではこのソフトウェアのアップデートを待つことをお勧めします。特に修理を行う予定がある場合はなおさらです。実際、今回のアップデートは全体的に待ったほうが良いかもしれません。Appleは、複数のタブレットが使用不能になったため、iPadOS 18を撤回したばかりですし、メッセージアプリに関する別のバグが繰り返しクラッシュを引き起こしています。
これらは良い方向性ではあるけれど、これはまだリンゴの焼きが足りないようです。リペアアシスタントが完全に焼きあがった時に、再度テスト(味見)してみる必要がありそうです。
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