Vision Pro の分解 パート2: ディスプレイの解像度は?
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Vision Pro の分解 パート2: ディスプレイの解像度は?

Vision Proの分解という大仕事の後、私たちはデュアルディスプレイや様々なセンサー、レンズそして、美しく設計されたバッテリーパックのさらに内部へ、詳細に掘り下げています。そこで発見した興奮を一挙にばらしたくはありませんが、デュアルディスプレイは驚異に満ちています。まずiPhone 15 Proの1ピクセルのスペースに、Vision Proでは50ピクセル以上が収められています。信じられませんが、これは事実です。

ディスプレイ

アップルによれば、Vision Proのディスプレイは「各眼に4Kテレビ以上のピクセル映像を提供している」と公表しています。 しかし4K、あるいはどのKであれ、あなたの眼にこれほど近ければ、何を意味するのでしょうか?私たちのスマートフォンは、テレビよりもはるかに高いピクセル密度を持っていますが、通常の使用ではどちらの画面でもピクセルを見ることができません。そこで、私たちのシニアテックライターであるArthur Shiのガイドの下で、詳しく見ていきましょう。

まず最初に、重要な2つの測定方法について説明します。Pixels per inch(1インチあたりのピクセル濃度、PPI)とは、その名の通り、画面の一定面積に詰め込まれたピクセルの数です。これは、デバイスの物理的な特性に基づく測定尺度です。

次に、角度あたりのピクセル数、pixels per degree(PPD)です。PPDの測定は、スクリーンからの距離が考慮されます。目がスクリーンに近ずけば、個々のピクセルを識別しやすくなります。これが、スマートフォンのスクリーンがテレビよりも高い解像度を必要とし、反対に映画館で見る画像が2Kであっても問題なく見える理由です。Vision Proでは、どうなるでしょうか?

1インチあたりのピクセル数、サイズが肝心

各レンズアセンブリには、パンケーキレンズアレイや、アイトラッキング用のカメラが埋め込まれた筐体、ディスプレイパネルが搭載されています。ディスプレイパネルはソニー製で、おそらく同社のマイクロOLEDディスプレイのカスタムバージョンです。

ディスプレイ全体は点灯しないため、パネル両側の点灯部分のみをカウントしています。点灯しているセンサー領域の寸法は、幅約27.5mm×高さ約24mm、もしくは約1インチ×1インチです。Evident Scientific DSX1000顕微鏡を使い、ピクセルを7.5μm(赤血球と同じ大きさ)で測定しました。各ピクセルはほぼ正方形で、赤と緑のサブピクセルが順に重なり合い、その横に2倍の大きさの青のサブピクセルがあります。この寸法に基づくと、点灯するエリアの合計は3660ピクセル×3200ピクセルで、12,078,000ピクセルをわずか0.98平方インチ内に押し込んだことになります!

しかし、四辺の角はカットされているため、画素数は減少します。切り取った角の三角形は非対称で、4つの角の面積はそれぞれ6.95 mm2, 11.52 mm2, 9.9 mm2、10.15 mm2、合計38.52mmです。総面積約660 mm2 に対して、切り取られた四辺角の面積は全体の5.3%、1パネルあたり11,437,866画素が残されます。両側のパネルと算出した誤差を合わせても、Appleが主張する23,000,000ピクセルに近づきます。

点灯エリアをデモンストレーションするために、スクリーン画面を撮影したセンサー(背景はiFixitの分解ルーム) 

これらのピクセルを縦横で割ると、PPI(1インチあたりのピクセル画像度)が計算できます。Vision Proは3,386PPIという驚異的な数値です。アーサー曰く、「こんなPPI、凄すぎる!」(アーサーの一言で、私ではありません。)

この数値の画素数なら、Vision Proは4Kに違いないでしょう。しかし、パネルの水平解像度は、一般的な4K UHD規格である幅3,840ピクセルには届きません。つまり、これは非常に高解像度なディスプレイです。しかし厳密に言うと4Kではないため、Appleは4Kパネルとは呼びませんでした。

これは、私たちがこれまで見た中で、最も高密度なディスプレイであることは間違いありません。比較のため、iPhone 15 Pro MaxのPPIは約460です。これはiPhoneの1ピクセルにVision Proのピクセル約54個を詰めることができます。

では、12.9インチのiPad Proはどうでしょうか?こちらは264 PPIで、Vision Proは12.8倍の精細さです。他のVRヘッドセットと比較すると、HTC Vive Proは約950 PPI(4896 px × 2448 px)でVision Proの3分の1以下、Meta Quest 3は約1218 PPIです。これで終わりではありません。まだまだ続きます。

視野角あたりのピクセル数:アングルについて語りましょう

画素密度の高さだけで、解像度が高いとは限りません。65インチの4Kテレビを考えてください。”たった”68 ピクセル画像度しかない4Kムービーでも、素晴らしく映ります。なぜでしょうか?あなたの座るソファはテレビから離れた場所にあり、ピクセル画素を小さな領域に縮小して見るからです。映像との距離が遠くなればなるほど、ピクセル画像度の数値は高くなります。地元スポーツ会場の大型スクリーンを思い出してください。スタジアム内のスクリーンから遠く離れた所に座ると、画面上のピクセルは目視できません。

このため、VRエンジニアはディスプレイの「良さ」を測るために、特別な指標を使います。視野角の解像度をpixel per degree(PPD)で測定します。つまり、これが視野角での水平ピクセル数を示し、異なる距離で画面を見ることを前提に設計された指標で、様々な解像度のディスプレイを比較できます。

しかし、このPPDを使った方法が完全とは言えません。それは次のような理由からです。

  • PPDは画面の端と中央で変化する。
  • 不思議な方法で、レンズが意図的にPPDを変化させる。
  • 立体視では、どれぐらい多くの”ピクセル”が見えるかに比重してしまうため、その数が曖昧になる。
Vision Proのパンケーキレンズはディスプレイを歪ませ、PPD計算を複雑にする。

Vision Proの視野角(FOV)を100°と見積もった場合、平均で34PPDと推定されます。これに対し、約2メートル離れて見る65インチ4Kテレビは平均95 PPD、30cm離れたiPhone 15 Pro Maxは平均94 PPDです。iPhoneと65インチテレビでは、画素密度や物理的な寸法が大きく異なるにもかかわらず、単純にどのように見るかによって、PPDの差が近づいたりします。

まとめ: Vision ProはPPIで言えば、超高解像度のディスプレイを搭載しています。しかし画面と目の距離が非常に近いため、角度分解能が低いと言えます。

最後の例として、私たちの友達であるKarl Guttag氏が、自身のブログでVision Proを最高のモニターとして使うのは「もったいない」と説明しています。つまり、Macの出力をVision Proにビームさせ、目の前に空間コンピューターを広げた場合、利用可能なピクセルのわずか一部しか使いません。Vision Proのディスプレイが4Kであったとしても、実際に使うのは中央部分だけで、残りのピクセルは周囲を映すだけです。

Karlによれば、これにより、個々のピクセルが見える低いPPDをもつ仮想Macディスプレイを見ることになり、通常のデスクトップの使用とは全く異なる体験になります。つまり、バーチャルの世界でMacを使うことは十分可能ですが、細かい作業には実際の4Kか5Kモニターの方が良いでしょう。

しかし、200ドルも出して巨大な専用ケースを買ったとしても、Vision ProはApple Studio Displayと比べて、はるかに持ち運びが簡単です。

レンズ

VRヘッドセットの下に、眼鏡を装着するのは理想的とは言えません。AppleがVision Proで出した答えは、アクセサリーのレンズをヘッドセット内部に追加することです。このレンズは有名なドイツの光学機器専門社ZEISSによって製造され、マグネットで簡単に取り外しができます。

各レンズにはペアリング用の専用コードが記載してあり、通常のパーツのペアリングとは異なります。このコードは、パーツを1つのデバイスにロックするものではありません。自分のVision Proから度付きレンズを取り外して、友人のユニットに装着しようと思えば、可能です。同じコードを入力して、新しいヘッドセットとペアリングするだけです。交換されるVision Proは、そのレンズの処方箋を認識し、それに応じてキャリブレーションを行います。設定プロセス中に、スキャン用の小さなコードが表示されます。

それでも、レンズをインストールするには秘密のコードが必要で、少なくとも現時点ではZEISSがレンズを独占しています。また、コード番号の入力ミスや出荷時の不手際があれば、一時的であってもレンズが使えない状況もありえます。

処方箋を提出すれば、AppleがVision Proと注文したレンズのキャリブレーションをしてくれると考えるでしょう。しかし、Appleがどんなに素晴らしい工夫をしていても、実際にどのようにキャリブレーションされているのか、その透明性がなければ確証が持てません。

Vision Proには、メガネをかける人にとってもう一つ小さな問題があります。一部の報道とは異なり、Appleによると、乱視(ブログ第一弾公開時点では、推測段階でした)を含むほとんどの症状に対応した矯正レンズが用意されており、遠近両用レンズや累進屈折力レンズも提供されています。しかし残念ながら、処方箋にプリズム値が含まれる場合は、対応していません。プリズム矯正は複視(ものが二重に見える)の矯正に使われます。自分の視力処方がサポートされているか確認する最も簡単な方法は、ZEISSのオンラインツールを参照してください。

このデバイスは、Appleの公式ルートから入手をすれば、仕立ての良い快適さを実現できるようです。

バッテリー

Appleの論理に基づくと、複雑なデバイスには複雑なバッテリー対策が必要です。別売りで200ドルもする頑丈なバッテリーは、超シンプルでありながらも、笑ってしまうほど大げさに設計されています。

まるで初代iPhoneのようなバッテリーケースは、アルミの塊から削り出され、周囲に留められたクリップでしっかりと蓋を閉じ、こじ開けて侵入するための隙間が一切ありません。ハンマーとノミを使って、なんとか開きました! しかも蓋は接着剤で固定されていて、開口するために設計されていないことが明らかです。

バッテリーセル自体は、iPhoneバッテリーサイズのパックが3つ重なっています。iPhone 15 Plusのバッテリーを取り出して比較してみたところ、わずかに厚いものの、面積は若干小さいことが分かりました。

Vision Proバッテリーパックのセルには1つあたりの容量が15.36Whと記載されており、3つ合わせて計46.08Whです。しかしこの数値は、豪華なアルミ製ケースに表示された35.9Whとは差があります。AppleはWhの定格を20%以上低く設定しているようです。Appleは、以前にも似たようなバッテリーのスキャンダルがありました。そのため、バッテリーの耐久性を考慮して、意図的に過剰充電させない可能性があります。これと同じ理由で、iPhone 15 Proの充電上限を最大の80%に設定すると発表したばかりです。もしくは、熱損失を配慮したうえでのWh計算が違うなど、別の理由があるのかもしれません。

左:出荷時定格15.36Whのバッテリーセル3個のうちの1個。右: 35.9Whと表示されたバッテリーパック。

温度センサーや加速度センサー(バッテリーパックを持ち上げると充電ランプのLEDが表示されたり、パックを体に装着していることも検知できる)を考えてみると、Appleはバッテリーに対するユーザーエクスペリエンスに強くこだわっていることが伝わってきます。2時間連続でバッテリーをポケットに忍ばせるなら、絶対にバッテリーが熱くなるのは避けたいものです。

パックはまた、Vision Proの処理要求に対応するために、USB規格外の13ボルトを出力しています。これは、独自の”大型Lightning”ケーブルが必要な理由の1つで、他のデバイスに誤って接続して壊してしまわないよう配慮しています。また、USB-Cバッテリーパックに直接接続することはできません。実際、Vision Proのバッテリーパックには高いテクノロジーが搭載されていて、壁のコンセントに接続されている場合でも、無停電で安定した電力を供給します。

全体として考えられるのは、Appleは最大量のパワーを詰め込むのではなく、バッテリーを体に装着するリスクを本当に、本気で真剣に受け止めているようです。これは、簡単に交換できるバッテリーがなぜ良い設計なのかを教えてくれる、素晴らしい例です。予備のバッテリーが200ドルでも、交換が可能なら、Wh容量を大幅に増やす必要はありません。

チップ ID

AppleはVision ProのM2チップと新しいR1チップを発表で強調しましたが、その他の部分についてはどうでしょうか?そして、バッテリーパック内のこれまで見たことのないほど複雑な充電基板について、聞いたことはありますか?

任せてください!Vision Proに搭載された全チップをチェックしたい方は、こちらのページを参照してください。

センサー

他のヘッドセットメーカーに対抗するAppleの最大の強みは、センサーです。カメラやLiDARスキャナーなどの様々な機能をヘッドセットに詰め込めることができますが、Appleのセンサーには秘密の武器があります。それは、長年行ってきた高度なセンサーデーターの分析と解釈、何度も繰り返してきたセンサー設計のイテレーションです。

2020年、LiDARセンサーを初めて搭載したiPhone 12 ProとiPad Proを覚えていますか?薄暗い下での写真撮影や距離測定、視覚障害者向けのアクセシビリティ機能が向上しました。その時、Appleには別の動機があったと直感しています。 リスクの比較的低い環境の中で、AppleはLiDARセンサーを搭載したiPad Proを使って、AR (仮想現実)機能を検証し、ハードウェアを大量生産して、貴重な知見とユーザーフィードバックの両方を得ました。

この素晴らしいCTスキャンとアニメーションを提供してくれたCreative Electronに感謝します!

フロント向きFace ID TrueDepthカメラも、Appleが誇る素晴らしいセンサー技術の一つです。Face IDのアレイには、ユーザーの顔に赤外線ドットを投影するレーザーと顔を赤外線で照らすフラッドイルミネーター、そしてその全てを管理する赤外線カメラがあります。データー処理をして、顔の3Dマップを生成します。Appleはこの技術に長けていて、Face IDアレイでユーザーの耳の形状をスキャンし、AirPodsの空間オーディオをあなたの耳の形に合わせて調整するカスタム3Dモデルを作成します。

その結果?暗闇でも手すりなしで、部屋のマッピングができたり、Memoji V2(なんだか不気味な)もしくはペルソナでのフェイス・マッピングができます。コントローラーは要りません。

Appleのもう一つの得意分野は、加速度センサーとセンサーから送信されるデーターの分析能力です。加速度センサーはiPhoneやApple Watch(転倒を検知すると、その場所から緊急車を呼ぶことができる)、そして初代HomePodにも搭載されています。Home Podが場所を移動したことを認識すると、部屋に流れる音を聞き直し、その広さや家具の配置などに応じてオーディオを再調整します。AirPodsには、タップのコマンドを検知する加速度センサーが搭載されています。これら全ての機能には、センサーからのデーターを高度に分析する必要がありますが、Appleは年を重ねるごとに、その技術が進歩しています。

ところで私たちは、素晴らしいセンサーを詳細に見ていますが、このデバイスで本当に重要なのはハードウェアではありません。Appleが長い月日をかけて、これらのセンサーの製造と信頼性を築き上げ、最大限に活用するためのソフトウェアを統合していることです。

リペアビリティ

Vision Proのリペアビリティ(修理のしやすさ)スコアを出すのは、ディスプレイの解像度を計算するのと同じくらい難しい作業です。

Visionのプラスポイント

一方で、私たちが気に入ったものがあります。バッテリーはモジュールのため、フル充電したバッテリーに交換したり、1、2年で消耗したユニットを簡単に交換できます。

サイドストラップも同様にモジュールです。取り出しができないスピーカーが含まれていますが、統合されたアセンブリはモジュールのため、SIMカード用取り出しツールを使って簡単に外せます。電源ポートも外せませんが、バンドアセンブリの一部に統合されているため、半モジュールです。また、装着が簡単なZEISSレンズやマグネットで装着するライトシールドも、私たちのお気に入りです。

iFixitのリペアビリティエンジニアであるCarsten Frauenheimは、「非常に高いモジュール性は一つのキーポイントになります。例えば、これまでとは違うバンド。この取り外し方法がAppleの公式ウェブサイトに公開されているほどです。」と述べています。


肌に直接触れる部品が、全て取り外しできるのは安心です。Light シールやLight シールクッションも含みます。リペアビリティのスコアを評価する際、私たちは消耗する部品や壊れやすい部品へ簡単にアクセスできるかを考慮します。特に、光学部品、スクリーン、および瞳孔間距離調整用の可動する部品は、壊れやすいフロントガラスの裏側ではなく、眼球側に搭載されています。メンテナンスのためにファブリックレイヤーを外すことは、高価な3Dガラスを一度に取り外すよりもはるかにリスクが低い利点があります。

Visionのマイナスポイント

一方で、前面カメラやセンサー、もしくはフロントガラスの裏側にある部品にアクセスすることは本当に大変です。そのガラスカバーをまとめて外すには、ヒートガンや様々なこじ開けツールを使って、何度も慎重に作業しなければなりません。もちろん、EyeSightを壊したからといって世界の終わりではありません。そこにある本当の危険は、ガラスを飛散させてセンサーの視界を遮断してしまい、結果として、センサーが機能しなくなることです。

私たちのリペアビリティスコアの採点基準では、デバイスを機能させるために必要なスクリーンやバッテリーなどの部品に重点を置いています。EyeSightディスプレイが重要な部品であると主張するのは難しいですが、外部センサーは欠かせないものです。もし、ガラスを割ってこれらのセンサーを遮断してしまうと、デバイスが正しく機能しなくなります。

リペアビリティを基準にした競争

Apple Vision Proと競合他社のヘッドマウントディスプレイ(HMD)のリペアビリティを比較してみると、どうしょうか?おそらく最も注目できる比較は、MetaのQuest 2とQuest 3ヘッドセットです。これらはVRおよびAR(XR全体)の市場で、約70%のシェアがあります。

XRのハードウェアに関連する内容と同様に、このリペアビリティの質問に対する答えは、とても複雑です。

Quest 2Quest 3を例に挙げてみましょう。両方のヘッドセットは、Vision Proのように、取り外し可能なハーネスで固定されたフロントロードのヘッドセットです。Metaのヘッドセットが、Valve Index、HTC Vive、PS VR2など他社製品のヘッドセットと異なる点は、単独で機能するスタンドアローンのデバイスであることです。しかし、Quest 2 & 3とVision Proの類似点はそこまでです。

Vision Proには外部バッテリーパックがあるのに対し、Quest 2とQuest 3の両方にはリチウムポリマーバッテリーがデバイス内部に搭載されているため、このような非常に複雑な修理では、一番最後に取り出せる部品がバッテリーです。バッテリーの交換は最も可能性が高く、一般的な修理であるため、Vision Proの設計は明白な勝利です。Vision Proのバッテリーパックは、無電源で駆動するデバイスにとって必要不可欠な部品でありながら、外付けです。

Quest 2のヘッドセットのバッテリー交換ガイド : 手順59まで進んでも、まだバッテリーに到達していません。


Vision Proの失敗点は、フロントガラスの脆弱性と、ユーザーインターフェース(UI)の複雑さです。一般的なケーブルにつまづいて、美しいハードウッドの床にヘッドセットから転倒して、同じく美しいガラスのEyeSightカバーが割れるのを想像してください。

Meta Quest Pro とMeta Quest 3 のヘッドセット

たとえすべてのセンサーが機能したとしても、破損したガラスによって外部カメラ、LiDARセンサー、および赤外線発信機の視界が遮られ、ユーザーの手の動きが追跡できません。他社メーカーのHMDとは違って、コントローラーがないため、前面ガラスが壊れてしまうと、音声コントロールなどのアクセシビリティ機能に頼らなければなりません。


耐久性の点では、Quest 2とQuest 3は、はるかに優れています。まず、外装シェルはガラスよりもはるかに壊れにくいプラスチック製です。カメラはケースの凹みに埋め込まれており、それ自体がHMDの残りの部分とは完全に別のモジュールとして、修理や交換が容易に行えます。

Vision Proと同様に、Quest Proはカメラとセンサーを前面のプラスチックの下に埋め込んでいますが、その前面のプラスチックは単純に取り外しができるクリップで固定されているため、修理や交換が簡単で安価で済みます。

リペアビリティスコア

私たちがリペアビリティのスコアを付ける際、製品カテゴリー内での部品をリストに出し、どの部品を評価するか選択します。しかし、XRハードウェアは最先端で、デバイスごとに、さらには世代ごとに、外装の構造から基本的なナビゲーション手段まで大きく異なります。

例えば、Vision Proのコントローラーがない点をどのように扱うかについて、長い間議論しました。他のHMDでは、コントローラーのバッテリーやボタンの交換がどれぐらい簡単であるかを考慮してきました。将来のXRデバイスは、コントローラーが取り去られるのでしょうか? 現在でも、Quest 2は市場で最も流通しているVRヘッドセットであり、価格が手頃なため、今後数年間はこの状態が続くでしょう。しかし、Vision Pro(そして直感的UI)は、将来のヘッドセットのスタンダードになる可能性も潜めています。

この点が、リペアビリティのスコアを評価する課題です。現在、主流のVRヘッドセットに搭載された「低テク」ハードウェアと、Vision Proの複雑で、製造工場時にキャリブレーションされたセンサーを、同じ土俵の上で比較するには、どこかで妥協が伴います。市場で流通している主要なハードウェアを考慮しなければならない一方、未来のHMDが持つであろう直感的なテクノロジーに、不当なペナルティポイントを科さないよう留意が必要です。

さて、今回の哲学的な議論はここまでにして、ではこの高価な超高密度テクノロジーのリペアビリティについて考えてみましょう。具体的なスコアを付けるには十分な情報がありませんが、リペアビリティのスコアで、仮の評価を付けるとすれば、自信を持ってスコア10点満点中4点とします。

結論は?これほど複雑なAppleのデバイスの中に、交換可能なバッテリーを見るのは想定外です。確かに、ACアダプタに近いものでありながら、高価です。しかし、AppleはこのVision Proを見て、交換可能な部品を目指しました。これはとても重要な点です。現実の基準はとても低いところにあります—交換可能なパッドを搭載していないHMDすらあります。バッテリーパックに交換可能なセルがあればいいと思いますか? もちろんです。Appleが試みた最初のデバイスとしては、とても素晴らしい成果です。

未来のVision

このVision Proの分解では、まだ多くの点で検証を終えていません。現在、iFixitのエンジニア・インターンであるChayton Ritteは、Apple独自のバッテリーケーブルをブレッドボード上に広げ、どのようにしてVision Proがバッテリーパックからの電気を受け入れているのか、その詳細を特定しようとしています。

また、iFixitが忌み嫌うパーツペアリングの存在を確認するため、2台のヘッドセットの内部パーツを交換する作業にも追われています。今のところ決定的なものはありませんが、ユーザーの皆さんからの経験をぜひ聞かせてください。

XRの未来がまだ、ここにはないのかもしれませんが、これは良いことだと思います。私たちが購入して手に入れるテクノロジーに意識を向けることで、メーカーはより良い技術のために切磋琢磨します。メーカーが製造するものに対して責任を持てば、設計プロセス段階で修理のしやすさを考慮し、可能な限りそれを追求するようになります。私たちの願いは、このような価値観がゴーグル内部に反映される未来において、リペアビリティが最後に付け加えられるものではなく、設計の基礎になることです。フェイスゴーグルがコンピューティングの未来であるなら、私たちは今、初期の段階からこれを正しい方向へ牽引する必要があるでしょう。