Appleは、修理に重要なパーツのペアリング問題について譲歩すると発表しました。交換したサードパーティ製パーツの性能を人為的に阻害することをやめると約束しました。ある一部分を除いて。
過去8年間に発売されたiPhoneモデルでは、サードパーティ製や中古のバッテリーを取り付けた場合、設定画面で確認できていたバッテリーヘルス状態の情報が非表示になりました。また、壊れたスクリーンを中古やサードパーティ製のパーツに交換した場合、周囲の明るさに応じてスクリーンの色温度を自動調整するTrue Tone機能全体も喪失しました。

今回、Appleはサードパーティ製のバッテリーやスクリーンに交換した場合であっても、バッテリーヘルスの表示とTrue Tone機能を維持できると約束しました。ーそのバッテリーにヘルス情報の表示機能があれば、ということでしょう。さらに、セルフサービス修理プログラムからパーツを購入する際に、デバイスのシリアル番号が不要になります。つまり、一般の修理店やリペアカフェは独立系修理サービスプログラム(IRP)の厳しい条件に影響されることなく、Appleの正規パーツを仕入れることが可能になります。(ただし、割引価格で仕入れるためには古いパーツを返送する必要がある)
この発表は、独立系修理ショップやDIY修理にとって大きなニュースですが、私たちが願っていること全てが応えられたわけではありません。交換後のFace IDとTouch IDを再有効化できる道が残されていますが、それでも、その実現もかなり近いと思われます。
Appleの4月の発表は不十分。今回は改善。
4月に、Appleがパーツのペアリングのポリシーを”見直して”、中古のAppleパーツをペアリングさせるというヘッドラインニュースが流れた時、私たちの見解はこれでは十分ではないということでした。
私たちは、サードパーティのパーツがデバイスの寿命を伸ばすためにどれほど重要であるか忘れないように促しました。メーカーは全てのパーツを提供しているわけではありません。メーカーは、ユーザーが長く使い続けたいと思わない限り、パーツを用意しません。そして、部品市場における競争によって、部品の価格は適切に保たれます。
ついに、この動きにAppleも加わったようです。

Apple、修理する権利法遵守の準備段階に
なぜ今になって、Appleはこのような方針に変更したのでしょうか?Appleが快諾して進んでいるわけではありません。最近、オレゴン州、コロラド州、そして欧州で可決された法案は、Appleにさらに踏み込むように要求しています。
私たちはここ数年、米国や欧州のアドボカシーパートナーとともに、独立系修理ショップにとって大打撃となっているパーツペアリング行為を抑制する法律を通過させるために懸命に闘ってきました。そして2024年初め、私たちはパーツペアリングの闘いにおいて3つの大きな勝利を収めました。
オレゴン州の法律では、「メーカーは、独立系修理業者もしくはユーザーが、機能する交換部品を取り付けた際に、部品の性能を無効にしたり、修理を阻害するパーツペアリングを行使してはならない」と定めています。コロラド州の法律もほぼ同じ内容です。4月に可決された欧州連合の修理する権利法令にも同様の文言があります。つまりTrue Tone機能とバッテリーヘルスの測定情報を非公開にすることは、これらの部品の機能を無効化していることになります。
コロラド州のパーツペアリングに関する規定は2026年に、オレゴン州は2027年に施行されますが、両州とも2021年以降に製造されたデバイスに遡及します。そのため、Appleのエンジニアたちは、交換したサードパーティ製パーツを完全に有効化させる方法を見出すよう指示されていることは知っていました。
Appleの報告書によれば、この変更は”2024年後半”に施行されるとのことです。その日が来るのを、首を長くして待っています。そして、彼らが発表した修理の約束は、常に期待通りには行かないという現実を味わってきたので、注意深く監視していきます。
デザインが与える耐久性にはリペアビリティも含まれる
これは、Appleが発表した「Longevity by Design (デザインが与える耐久性)」と呼ばれる、24ページある報告書の16ページに紹介されています。Appleが公開した驚くべき画期的な文書と言えます。
正直なところ、我々はAppleの修理に対するアプローチに対して、厳しい意見をもっています。なぜなら、Appleは23億台ものiPhoneを世に送り出し、四半期ごとに600万台のMacを出荷しています。世界はApple製品で溢れているにもかかわらず、修理に制限をかけることで、全世界のユーザーに影響を与えています。私たちがAppleに対して厳しい理由は、彼らがマーケットリーダーであり、業界の基準を定めているからです。しかし、小言を言ってきた私たちから見ても、この報告書には批判より評価すべき点が多いことがわかります。

報告書で「すべての製品に交換可能なバッテリーを設計することを約束します 」と書かれています。なんと素晴らしい!iPhoneの前面側からでも、背面側からでも開けられるよう再設計したことを賞賛します。これ以上に簡単なバッテリーの交換方法はあるのでしょうか?今までに、iPhoneのバッテリー下に搭載されたデリケートなストレッチタイプの接着ストリップをアクシデントで切断したことがある人はこう言うでしょう。「もちろん、他に方法はある」と。
多くのApple製品は、製品を破壊せずにバッテリーを取り外すことはできません。AirPodsが最も有名な例ですが、Apple Pencil、Magic Trackpad、Magic Keyboardに、交換できないバッテリーが搭載されています。また、比較的修理しやすいバッテリーの場合でも、Appleが開発したペンタローブ特殊ネジが使用されているため、専用のドライバーが必要となります。
私たちは、製品ライン全体で交換可能なバッテリーへの取り組みが見られることを期待しています。

またAppleの公式文書によると、サードパーティの修理サービスやパーツ、修理用ツールの使用を選択したユーザーに対しても、相手先ブランド製造業者(OEM)基準による修理を完了し、修理後のデバイスの機能性が可能な限り維持できるようサポートする」と誓約しています。今後を見守っていきましょう!TrueTone機能とバッテリーヘルスの表示の制限を撤廃することは、その目標達成に大きく貢献するでしょう。
また「ユーザーのセキュリティとプライバシーに影響を与えない限り、Apple製品と同じ仕様で製造されたサードパーティ製部品を積極的に無効にすることはありません。これは現在、生体認証部品に限定されています」と述べました。これは素晴らしいことです!ただし、この声明には多くの解釈の余地があります。
「同じ仕様で設計されている」とはどういう意味でしょうか?彼らは厳格な仕様や設計を公開する意思があるのでしょうか?おそらく、彼らは独自のチップセットを公開しないでしょう。その場合、この声明に基づくと、正常に動作するはずの部品を拒否する可能性を残しています。バッテリーに互換性があるかどうかを決めるのは誰でしょうか?
さらに、「顧客のセキュリティとプライバシー」が、修理する権利に対する万能の免除材料として使われるのをよく見かけます。Appleがこのフレーズに過度に依存するのではないかと心配しています。

独立した修理には、Face IDの再有効化のための道がまだ必要
犯罪者がiPhoneを盗んでカメラを交換し、元のユーザーの銀行口座や電子メール、その他の個人データにアクセスできるようになることを望む人はいません。明らかに、Face IDとTouch IDを有効にするためのソフトウェアの制限は、重要なセキュリティ目的を果たしています。
しかしAppleに認定された修理代理店では、新しいスクリーンを取り付けた後、修理を完了させるためにFace IDを再有効化することが可能です。つまり、Face IDを再機能させるためのソフトウェアプロセスが必要で、その作業を正規代理店に限定することで、Appleはサードパーティの独立した修理を弱体化し続けてきました。
Face IDの制限は、独立した修理業者やそれを利用したい人々を苦しめますが、それでも携帯電話の盗難を止めることはできません。今日の多くのiPhone窃盗団は、デバイスのパスコードを取得するため、ソーシャルエンジニアリングを使って盗んだiPhoneのリセットに何の問題もありません。
Appleには素晴らしいセキュリティチームがありますが、私たちにも優れたセキュリティチームがあります。サイバーセキュリティの専門家ネットワークであるSecuRepairsは、サードパーティによるFace IDの交換を可能にするための安全なメカニズムを構築する方法について、ぜひAppleと協力したいと希望しています。
未来は修理可能になる
何よりもこの報告書は、Appleが可決された「修理する権利」法を遵守する意図があることを示唆しています。彼らは1月にニューヨークで施行された法律に従うためにセルフサービス修理プログラムを導入し、さらにオレゴン州とコロラド州で可決されたパーツのペアリング禁止条項にも従う準備を進めていることがわかります。
この発表は、米国でさらに2つの修理する権利法が施行される直前に行われました。カリフォルニア州とミネソタ州の法案は、2024年7月1日(月)に施行されます。これらの法律が施行されれば、米国人口の20%が電子機器を対象とする修理する権利法の下に置かれます。
私たちは7月1日を「修理の独立記念日」と定め、法案の発効を祝うとともに、このブログポストも「お祝いしましょう」トピックの山に加えます。好きな飲み物を片手に、今までできなかった修理をして、私たちと一緒にお祝いしましょう。(ただし、ドライバーをしまってから花火を楽しみましょう)
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