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Apple Watch Series 7の分解-3人の元Appleエンジニアと共に

新ガジェット情報提供者の皆さん、サプライズです!  Apple Watch Series 7 の側面はフラットエッジデザインではありません。その代わり、今回の新モデルには、Appleのエンジニアだけが完全に説明できるような、経験深い目でなければ見つけられない秘密が詰まった、まさに分解のために作られたWatchのようです。

幸いなことに、今回私たちにはこの両方を兼ね合わせています。

なぜなら今回の分解では、元Appleのエンジニアたちで構成された優秀なチームが揃うInstrumental社に連絡を取りました。彼らの中には初期デザインのApple Watch開発を担当したエンジニア達がいます。彼らはApple Watchの発展に大きくインストルメンタル(立役者)となったチームです。

Apple Watch Series 7の内側には、驚くべきディスプレイ技術が含まれていますが、これを大量に製造することは困難であり、発売が遅れてしまった一連の原因となったと思われます。先月、Appleがこの新モデルを発表した時、実際の発売日が未定でした。つまり、これは製造過程の問題があるという赤信号です。(元Appleのエンジニアたちは退職後、どうやって時間を過ごしているのか知りたい方は、このブログを詳細に読んでください。このような製造上の問題を解決しているのです。)

Apple Watch Series 7の分解

いつものように、最初の分解は内部を開くことですが、Series 7のディスプレイが大きくなったので作業は少し楽になります。このSeries 7に(初めて)標準サイズのハンドル付き吸盤カップをディスプレイに装着し、ゆっくりと慎重に持ち上げれば、ベゼルの下に隙間が生じて、オーピニングピックが滑り込みます。ヒートパッドを80℃に設定して、その上にディスプレイを直接置いて温め、留められた接着剤を柔らかくばなりません。

Watchを温めて分解を始める前に、ヘルスセンサーをじっくりと見比べます。Series 6(左端)と比べて変化していないことが分かります。

その間、恒例になったCreative Electronから提供されたX線画像を確認してみましょう。(昨年のSeries 6分解時のX線写真と比較してみてください)

Creative Electronから提供されたSeries 7 セルラーモデル(45mm)のX線画像

次に、アクシデントで内部を引っ掛けたり、ケーブルを伸ばしたりしないように注意しながらオープニングピックでこじ開けます。結果、成功しました!(オリジナルApple Watchの設計者が肩越しにこの作業を見ている中、作業がうまくいって本当によかったです。プレッシャーなんてありません!)

Displays(ディスプレイ)とDelays(遅延)

新 Series 7 (左) 45mmと “旧” Series 6 () 44mm

Series 7内部の変更はわずかながらも、とても重要です。長年、Watchの分解を見てきた人であれば、かつて診断ポートがあったバッテリーの下に複雑なブラケットがなくなっていることにすぐ気づくでしょう。噂によると、Appleは高周波ワイヤレスインターフェースを使って代用しているようです。これについては後ほど詳細に説明します。

新ディスプレイ (左)とSeries 6(右)の裏側。上部端にご注目ください。

さらにディスプレイには、大胆な変更が加えられています。改良されたSeries 7のディスプレイは、前モデルと比べてシンプルに見えます。昨年分解したSeries 6には、2種類の目立つフレックスケーブルが搭載されていました。1本は上側の黒いケーブル(タッチセンサーレイヤー用)と、もう一本は下側のくすんだ緑色のケーブル(OLEDパネル用)です。しかし、Series 7では黒いケーブルが廃止されています。

Series 7のディスプレイ (上/左)はOLEDとタッチセンサーレイヤーが統合されています。カバーガラスから完全に乖離します。
Series 6 (下/右で、より厚みのあるベゼル付き)はタッチセンサーレイヤーがガラスに装着しています。

ディスプレイ用のフレックスケーブルの数を半分にすることは、そう簡単にできません。どういうわけか下側にあるOLEDディスプレイフレックスケーブルに、タッチシグナル(Series 6では上側に搭載)が統合されています。

まとめ: このディスプレイはタッチシグナルが統合されたOLEDパネル (別名: オンセルタッチ)を搭載しているようです。このディスプレイは、新iPhone 13シリーズでも採用されています。これまでのAppleの開発史から考えると異例と言えます。iPhoneのように大量生産されないAppleWatchの方を先に、新ディスプレイテクノロジー(OLED、LTPO技術-低音多結晶酸化物、常時表示と可変リフレッシュレート)を採用してきました。しかしながら今回は、世界中で高い需要があるiPhoneでこのテクノロジーがまず紹介されました。わずか数週間の差とは言えども、これまでの流れと逆の順番でした。

このディスプレイは恐るべきDワードをもたらしました。つまりDELAY(遅延)です。AppleはApple Watch Series 7を今年9月に発表した時、具体的な発売日を公表しませんでした。唯一のヒントは”秋後半”というワードでした。実際の待ち時間は短かったのですが、Instrumental社によれば、生産の遅れによって目標にしていた発売日に間に合わなかったのだろうと推測しています。遅れの大きな原因は、新ディスプレイ製造上の問題でしょう。テック業界の中で、スクリーンは最も複雑なサプライチェーンと組立工程を併せ持っています。この新テクノロジーによってデザインの可能性を広げた一方で、Series 7の発送が遅れる結果となってしまったのです。

バッテリー

公式のバッテリー駆動時間は”最大18時間”と、前モデルと同じです。だからといって分解レポートが不要とは限りません。ここにも隠された変更があるからです。

41mmと45mm両モデルのバッテリーの形状は、去年モデルのものと比べてわずかに幅広く、そしてわずかに容量が大きく、エネルギー密度が高くなっていることが分かりました。しかし、大型で鮮明度が高いディスプレイでは電力を消費します。そのため総合的なバッテリー駆動時間としては、前モデルに対してプラスマイナスゼロとなるはずです。両モデルのバッテリーは、最大電圧と平均電圧が前モデルと同じで、バッテリー自体の化学的変化はないものと思われます。

バッテリースペック:

  • 40mm S6: 1.024 Wh
  • 41mm S7: 1.094 Wh (6.8%の増量 )
  • 44mm S6: 1.17 Wh
  • 45mm S7: 1.189 Wh (1.6% の増量)

2年前、Series 5モデルで初めて見て衝撃だったメタル製パウチ入りのバッテリーデザインが、41mmモデルのみに受け継がれています。なぜいつも小型モデル限定なのでしょうか?いくつかの理由が考えられますが、おそらく、Appleは小型の41mmモデルに多くのエネルギーを詰め込んで、バッテリー駆動時間を最大限に延ばしたかったのでしょう。しかし45mmはバッテリーサイズ自体が大きいため、このような実装は不要と考えたのではないでしょうか。

埃とスピーカーデザイン

スクリーンとバッテリー以外は、わずかながらもインパクトある変更が加えられています。Taptic Engineとスピーカーを出すために、小さなブラケットを外す細かい作業は必要はありません。Appleは念入りに、すべてのパーツの組み合わせ方を再考したようです。この合理的なデザインは、リペア業界で大歓迎されています。

もうひとつの “新 “機能はIP6Xの防塵性能です。人気YouTuberであるMarques 氏はApple Watch 7のレビューの中で、”IP6X防塵性能は新デザインやコーティングによるものではなく、AppleがSeries 7モデル以前にテストをしなかっただけだ”と述べています。彼がコメントには合理性があります。水深50mまでの防水性能は、Series 6で既に備わっています。このレベルの防水性能を実現するには、防塵に比べて桁違いに難しいと言われているからです。(耐水性を基本にデザインが決定されます。そして最も過酷なテストが行われます。)

Series 7 (上)と Series 6 (下) のスピーカーモジュール

しかし、何か新しい防水対策が加えられているとすれば、それを探し出すことに決めました。そこで注目したのが、スピーカーグリルを覆っているメッシュカバーです。見た目はSeries 6の方がきめ細かいメッシュであるにもかかわらず、実際にはあまり役に立たないものでした。これを廃止して、よりシンプルなデザインを選んだのでしょう。

嵐の中のポート

次に取り出すのはS7のパッケージです。今年の新モデルには最新プロセッサが搭載されていませんが、他にも興味深いものがあるかもしれません。

外観上の変更点の一つは、Watchバンドの溝に隠されていた診断ポートが廃止されたことです。噂によると、このS7パッケージの中に新60 Ghzのワイヤレスモジュールが搭載されていて、Appleだけが所有するドックに繋げると、物理的なポートなしで同じ故障診断を行うことができるようです。

過去のモデルには、時計の下側のバンドの下に隠された、ほとんど目で確認できない診断ポートが搭載されていました。(Series 3の分解より)

Instrumental社の元Appleエンジニアは一言、”これはショックだ!”と反応しています。そもそもこの診断ポートは、組み立て時のソフトウェアのテストとロード、および故障したデバイスのデバッグに不可欠なものでした。(しかしながら、Appleのソフトウェアにアクセスできないサードパーティの修理テクニシャン達にとっては、役に立たないものでした)

それならば、なぜ診断ポートを廃止したのでしょうか?液体侵入を懸念するポイントが1つ減るならIPX的には取り外した方が有利です。また、組立作業も簡単になり、内部スペースも少し節約できます。また、あまり考えたくはありませんが、このSeries 7は未来のポートレスiPhoneを実現するためのテストかもしれません。

リペアビリティ

残念なことに、近年のiPhoneは少しずつリペアビリティスコアを落としています。この残念な状況を鑑みて、まず通常のWatchの修理ができるかどうか点検してみることにしました。朗報です! 45mmモデルのディスプレイとTaptic Engineの交換は成功しました。ディスプレイの自動輝度調整を含むすべての機能は、同モデルのWatchから交換した後でも機能しました。

バッテリー交換も同様に上手くいきます。さらに、watchOSは交換後の新しいバッテリー性能の状態を確認することができました。これは、iPhoneの”非純正な”バッテリー交換では不可能です。さらに、Series 6から調達したバッテリーは、Series 7でも問題なく動作しました。推奨できませんが、いざというときに使えます!

モデルの世代を超えた部品の互換性は、部品の入手が容易になるだけでなく、製造上の無駄を減らすことにもつながります。製造上の無駄とは、8兆ドル規模にのぼる問題であり、Instrumental社のスタッフたちはその解決に多くの時間を費やしています。(私たちの分解作業を手伝っていない時は)彼らのプラットフォームは、ミスや実験、再作業や現場でのミスなど、サプライチェーン全体の無駄を削減することを目的としています。彼らの言葉を借りれば、Instrumental社のプラットフォームは、エンジニアが一般的な製造上の問題を回避できるためにあります。その結果、エンジニアはイノベーションや持続可能なデザイン設計により多くの時間を費やすことができます。何よりも、今日の分解作業のために時間を割いてくれたことに心から感謝しています。

最後に

Apple Watch Series 7は、iFixitのリペアビリティ評価に基づいて6/10を獲得しました。その理由は、モジュール構造と、スクリーンとバッテリーに簡単にアクセスできることが大きな理由です。バンドの交換が可能で、バンドはオリジナルWatchまで遡って互換性があるのも嬉しいポイントです。今後の改良点は?無料のサービスマニュアル、適正価格の純正交換パーツの販売、そして修理の度に接着剤を剥がしたり、貼り直す必要のないスクリーンの登場などに期待しています。

Instrumental社のTobiasとの対談 をご覧になっておられない方は、ぜひこちらのビデオをご覧ください。(英語のみ) Apple勤務時のストーリーなども伺うことができます。Tobiasとチームの皆さんが、このSeries 7の分解に協力してくれて、多大なる感謝を伝えます。