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修理する権利は

 前進しています。

「修理する権利」とは、自分で修理したり、頼れる修理ショップに修理を依頼したり、自分で所有するものを自由に修理できるようにするべきだ、という考え方です。

iFixitは2003年の創業以来、修理する権利のために戦い続け、2014年からは米国と欧州での法整備を提唱してきました。それ以来、修理する権利を求める運動は世界中に拡大しています。しかし、修理する権利に関する法律は実際にどこで、どのように成立したのでしょうか?

私たちはこのリストを最新情報に保つよう努めていまますが、全てを網羅することは保証できません。このリストに載せる情報をお持ちの方は、ぜひこちらまで 情報共有してください。お知らせください!

アメリカ

マサチューセッツ州

Motor Vehicle Owners’ Right to Repair Act (カーオーナーの修理する権利法: 2012)

2012年、マサチューセッツ州の有権者は自動車を対象とした、全米初となる「修理する権利」法を圧倒的多数で可決しました。この法案は投票の87.7%、240万票を獲得して可決され、自動車メーカーはオーナーや独立系修理ショップに対して、故障診断情報や安全情報を提供することを義務付けました。2012年11月6日に同様の妥協案が可決され、2013年にこれらの相違点が修正されたうえで法律として制定されました。その後、自動車メーカーはオートケア協会と協力して、擁護団体が自動車を対象とした修理する権利法の内容をこれ以上推進しないと約束する限り、覚書に基づいた同等の保護を全国に拡大しています。

  • 対象範囲: 大型車を含むモデルイヤー(製造年度)2002年以降の自動車。(ただし二輪車は除く) 2015年モデル以降のすべての新車に対して、故障診断および修理情報のための非独占的インターフェースを提供しなければならない。
  • 発効日: 2013年1月1日

マサチューセッツ州 修理する権利に基づく車両データアクセス要件構想 :2020

オートケア協会と自動車メーカー間の覚書では、テレマティクスデータ(燃費やブレーキなどを追跡するためのシステム)が明確に除外されていました。しかし、内部でシステム統合が進む今日の自動車が増え続ける中で、テレマティクス データシステムを介して診断情報が伝達されることがますます多くなっています。そこでマサチューセッツ州民は、自動車メーカーに対してテレマティックデータを提供させる法案を圧倒的多数で支持しました。自動車メーカーは即座にこの法律の施行を阻止する訴訟を起こしましたが、2023年3月、マサチューセッツ州司法長官のアンドレア・ジョイ・キャンベルは、審議中の訴訟にもかかわらず、この法律を施行しました。

  • 対象範囲: 2022年モデル以降のテレマティクスシステム搭載車。
  • 発効日: 2020年12月18日

コロラド州

車椅子を対象とする修理する権利 :2022

2022年、コロラド州はHB22-1031「電動車椅子を修理する消費者の権利」を可決しました。この法案により、車椅子のユーザーと独立系修理技術者は、メーカーの認定技術者と同じ修理部品、工具、修理マニュアルにアクセスできるようになりました。この法案制定から数日後、車椅子を利用するコロラド州民は、これまで利用できなかった車椅子調整(キャリブレーション)ソフトウェアへのアクセス権を得て、新しい自由を享受しています

  • 対象: 電動車いす
  • 発効日: 2023年1月1日

農機具を対象とする修理する権利 :2023

2023年、コロラド州はに史上初の農機具を対象とした修理する権利、HB23-1011「農機具を修理する消費者の権利」を可決しました。前年に可決された電動車椅子法案と同様に、この法案は、消費者や独立技術者たちが、メーカーの認定技術者と同じ部品、工具、修理マニュアルにアクセスすることを保護するものです。この法案が2024年1月1日に施行されれば、数十年にわたる農機具メーカーによる修理の独占が解消されます。つまり、アメリカ人はこの独占がもたらす食品価格の上昇を通じて、その代償を払ってきました。

  • 対象: トラクター、トレーラー、コンバイン、スプレーヤー、耕運機、ベーラー(圧縮梱包機)など、主に農場または耕作地での作業用に設計された農機具。
  • 発効日: 2024年1月1日

ニューヨーク州

電子機器を対象とする修理する権利 (2022)

ニューヨーク州の電子機器修理権法案(S4104-A/A7006-B)は、強大な消費者保護を掲げて2022年6月に州議会を通過しましたが、2022年12月に行われた州知事による署名時点で、製造メーカーが繰り広げたロビー活動により、その影響力は大幅に弱体化しました。例えば、メーカーは安価な部品から大きなアセンブリを作れるため、これは、多くの消費者にとって手の届かない修理価格になりかねません。もしくは知的財産のライセンス供与も義務付けられないため、ソフトウェアによるパーツのペアリングによる修理の妨害が続くかもしれないという懸念です。(州司法長官が法律をどう解釈するかにもよりますが)。それでも、この法案が通過すれば、メーカーは一部のパーツとツール、修理マニュアルの提供が義務付けられます。メーカーは違反1件につき500ドルの罰金が科されます。

  • 対象範囲: 2023年7月1日以降にニューヨーク州内で販売される10ドル(金額については毎年調整)以上のデジタル電子機器に類する全ての製品。(自動車、医療機器、オフロードおよび農機具、家電製品、ビデオゲームコンソールを除く)
  • 発効日: 2024年1月 (正式制定から1年後)

ミネソタ州

Digital & Appliance Right to Repair :デジタル&家電製品を対象とした修理する権利 (2023)

ミネソタ州は2023年、オムニバス法案の一部として広範な「修理する権利」改革を可決しました。一部の例外(農機具、ビデオゲームコンソール、特殊なサイバーセキュリティ・ツール、自動車、医療機器)を除く全ての電子機器が対象です。スマートフォンやノートパソコン、家電製品やネットワーク機器に至るまで、チップを搭載したあらゆるものが含まれます。これらすべての製造メーカーは、ユーザーや独立系修理ショップに対し、正規修理代理店に提供するのものと同じ部品、ツール、修理マニュアルの提供が義務付けられます。

  • 対象: 2021年7月1日以降に製造されたハードウェア製品で、チップ搭載型電子機器(農機具、ビデオゲームコンソール、自動車、医療機器、特殊なサイバーセキュリティツールを除く)。
  • 発効日: 2024年7月1日

カリフォルニア州

The Right to Repair Act :修理する権利法 (2023)

2023年、カリフォルニア州はSB 244(修理する権利法)を可決しました。この法案は、ほぼ全ての電子機器(ゲームコンソールと警報システムを除く)と家電製品に適用され、交換用の部品と工具、修理マニュアル、ソフトウェアを一般消費者と独立した修理ショップが利用できることをメーカーに求めるものです。法案は、メーカーに対し、50-99.99ドルの製品については3年間、100ドル以上の製品については7年間にわたり、正規の修理代理店と同等の修理マニュアルを提供することを義務付けています。この法案は、AppleやHPといった想定外の支持を含む、家電業界内からの前例のない支持を獲得して通過しました。

  • 対象: 2021年7月1日以降に製造された、ビデオゲームコンソールおよび警報システムを除くすべての家電製品および電子機器。
  • 発効日: 2024年7月1日

欧州連合(EU)

フランス

リペアビリティインデックス (2020)

フランスでは、スマートフォンを始めノートパソコン、テレビ、洗濯機、掃除機、高圧洗浄機などの販売時に、0から10点のリペアビリティスコアの表示が義務付けられています。このリペアビリティインデックスとは、2020年に可決された2020-105号の第16-I条で、メーカーに対して製品の分解のしやすさや修理マニュアル(フランス語)やスペアパーツの入手のしやすさ、スペアパーツの価格などを自己評価することを義務付けています。このインデックスは段階的に統合され、最終的にはより広範なサステイナビリティ(持続可能性)の指標に取って代わる予定です。フランス政府は、リペアビリティスコアのディレクトリを構築中で、現在は任意ですが、サステイナビリティインデックスの展開と共に義務化される予定です。

  • 対象: スマートフォン、ラップトップ、テレビ、芝刈り機、ドラム式洗濯機、トップロード式(縦型)洗濯機、食器洗浄器、掃除機、高圧洗浄機
  • 発効日: 2021年1月1日

スペアパーツ提供の義務付け (2022)

リペアビリティインデックスの実現に影響を与えたサーキュラーエコノミー(循環型経済)イニシアチブに基づき、フランスはスペアパーツの提供を義務付ける政令を制定しました。2022年、ノートパソコンとスマートフォンの新モデル発売から5年間は、スペアパーツの提供が義務付けられます。2023年、フランスはこの対象範囲を、電動DIY /園芸用ツール、自転車やe-bikeを含むスポーツ・レジャー用品、その他の原動付パーソナルモビリティにも拡大しました。製造メーカーは、スペアパーツを発売後すぐに提供することが求められ(例えば、自転車のホイールとペダルは発売後すぐに入手でき、バッテリーは2年以内に購入可能とすること)、発売後5年もしくは10年間のパーツ提供が義務付けられます。

  • 対象: ラップトップ、スマートフォン、電動DIYと園芸用具、ラップトップ、スマートフォン、スポーツ・レジャー用品、原動付パーソナルモビリティ(E-bike)など。
  • 発効日: 2021年12年31日

欧州地域全般

エコデザイン規制 (2019)

洗濯機や食器洗浄器、冷蔵庫、ディスプレイ、サーバー、溶接装置などの製造メーカーは、スペアパーツの提供やメンテナンス情報の公開が義務付けられています。これらのエコデザイン規制は、2019年に可決され、2021年に施行されましたが、修理を専門とする業者にとって最も強力な法律です。しかし、多くのスペアパーツと修理情報は修理の専門家に限定されています。推進派グループは、この法律を取り巻く他面での制限を指摘しています。 製品の耐用寿命の間、メーカーはアップデートを提供する必要はなく、メーカーは部品を高価なアセンブリに加えることもできます。(クロエ ミコライザク氏は、ベアリングだけが修理を阻害しているにも関わらず、ドラム式洗濯機全体を交換しなければならないという例を挙げています。)そしてEUは、スマートフォンやタブレット端末についても同様の法施行を検討しています。2023年に法案が発表され、間もなく施行される見込みです。

  • 対象: 冷蔵庫、洗濯機、食器洗浄機、電子ディスプレイ(テレビを含む)、光源および制御ギア、外部電源、電気モーター、自動販売機、電源トランス、溶接装置など。
  • 発効日: 2019年10月1日

Battery Removability :バッテリーの取り外しに関する規制 (2023)

2027年以降、EUで販売される電子機器は、エンドユーザーが”容易に取り外し、交換できるように設計されたバッテリー”を搭載することが義務付けられています。バッテリーは消耗品であり、一般的に電子製品の中で一番最初にメンテナンスを必要とするものです。この規制は機器のリペアビリティ(修理しやすさ)に大きな影響を与え、電子廃棄物の増加に歯止めをかけてくれるでしょう。EUでは、2006年のバッテリーに関する指令に基づいて、バッテリーの廃棄が規制されています。この指令は、バッテリー製造に含まれる化学物質を認可し、安全な製品の引き取りと廃棄方法を義務付けているものです。2023年、EU委員会、欧州議会、欧州理事会は、これまでのバッテリーに関する指令に代わる、EUバッテリー規則の最終文書を発表しました。これは2006年の指令を超越するものです。

  • 対象: 医療用画像装置および湿潤環境下での使用を意図とする機器を除く、小型/携帯型バッテリーを搭載した全ての電子製品。
  • 発効日: 2023年7月10日

素晴らしい制度: リペアファンド

以下の例は厳密に言う「修理する権利」法ではありませんが(つまり、所有者が自分の好きなように物を修理できる権利を確保するものとはなりません)、修理にかかる基金の設立やボーナス支給といったインセンティブは、修理を促進する公共政策のもう一つの領域と言えます。人々の修理したい意欲が、費用によって度々妨げられることを考えると、政府や自治体による修理資金の援助は、その障壁を乗り越えるのを助けることができます。こうしたプログラムに触発され、アメリカのポートランド市もリペアバウチャーを発行する同様のプログラムを試験的に導入しました。

オーストリア: リペアボーナス (2017)

グラーツ市は世界で初めて修理にかかるボーナス制度を導入し、修理クーポンの提供を始めました。その後、2020年にウィーンで試験的に実施されて成功を収めた後、オーストリアは2022年に全国的な修理ボーナスキャンペーンを開始しました。消費者は電子製品や家電製品の修理費用のうち半額の費用、最大200ユーロまで補助を受けることができます。このプログラムに登録した独立系修理ショップは修理用バウチャーを受け取ります。プログラムの初年度、クーポンの申請は525,000件にも登り、3,469の修理業者を支援しました。

ドイツ: リペアボーナス (2021–2022)

2021年と2022年の各数ヶ月間にわたり、ドイツのチューリンゲン州は修理ボーナスを支給し、1日平均あたり50件の修理を支援しました。オーストリアのリペアプログラムと同様、インセンティブは修理費用の50%をカバーしましたが、チューリンゲン州の場合、リペアカフェで使用するスペアパーツの費用にも充てることができました。個人が受け取れる補助金の上限は年間100ユーロで、2023年度の申請が始まっています。一方、ベルリンザクセンは修理ボーナスの試験的プロジェクト導入を検討しており、バイエルンも同様の仕組みを提案しています。

フランス: リペアファンド (2022)

オーストリアとチューリンゲンのリペアボーナスの成功に触発され、フランスは廃棄物対策のAGEC法の一環としてリペアファンドを導入しました。2022年9月より、フランス国民は、保証対象外となったノートパソコンやスマートフォン、テレビ、洗濯機、芝刈り機の修理費用の一部を負担してもらえるようになりました。申請対象となるには、QualiReparラベルを取得した修理業者に修理を依頼する必要があります。そして2023年10月から、フランス居住者は衣料品や靴の修理に関しても政府が実施するリペアファンドを受けることができるようになりました。

オーストラリア

Motor Vehicle Service and Repair Information Sharing Scheme :自動車整備・修理情報共有スキーム (2021)

オーストラリアの自動車メーカーは、独立系修理店/修理テックに対し、マニュアル、修理サービス速報、配線図、技術仕様書など、修理に必要なすべてのデータや情報を提供しなければなりません。アフターマーケットの専門家によると、修理工場に持ち込まれる車の10台に1台は、適切な情報が入手できないために修理に影響を受けていました。この制度が導入されたことにより、修理がより安価に、そして修理がより広範囲で可能となります。このスキームに準じない場合、メーカーには1,000万豪ドルの罰金が科されます。

あなたも参加できます

「修理する権利」法案は世界中の各地で導入が検討されていますが、議員たちは、なぜこれらの法律を可決する必要があるのかという、実際の消費者たちの意見や独立系修理工場/修理テックから現状の問題を聞く必要があります。

米国ではRepair.orgを、欧州ではRepair.euをチェックしてください。それ以外の地域に住む人は、地元の修理する権利擁護団体を探してください。