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ビットの歴史: スクエアヘッド(ロバートソン)

現在連載中のドライバービットの歴史を紹介する第2弾です。Manta Driver Kit とMahi Driver Kit の発売に合わせて公開されました。

私は幼い頃から、フィリップス(プラスネジ)が非常に優れたネジ頭であると知っていました。何世紀にもわたって君臨してきたマイナスネジに比べて、未熟な工業労働者でも迅速かつ効率的に製品を組み立てることができるようにするために発明されました。iFixitではフィリップスの使いやすさを賞賛し、修理を可能にしてくれるネジとしてDIY愛好家たちの強い味方であると支持しています。しかし、それは半分のストーリーに過ぎず、カナダでは素晴らしい歴史的事実を何年間にもわたって、私たちから隠してきました。

その昔、フィリップスの前にロバートソンという人がいました。

Robertson screwdriver
Public domain image by Matt Deres.

1900年代初頭、カナダの工具販売員ピーター・リンバーナー・ロバートソン(Peter Lymburner Robertson)は、新しいバネ式マイナスドライバの使い方を実演していました。ところが、そのドライバーの刃がネジ頭から滑り落ちて手を切ってしまい、もっといいものがないかと思い巡らすようになりました。ロバートソンが発明したものは?ネジの頭には四角いソケットで、中心にぴったりとフィットして、強いトルクがかかっても片側にずれたりカムアウトしたりしないネジでした。

実は、これは新しい発見ではありませんでした。1875年にアラン・カミングス(Allan Cummings)が角ドライブネジを発明して特許を取得したものの、製造が困難でした。しかし、ロバートソンの設計では、正方形の側面にテーパーをつけ、金型でプレスしてねじを冷間成形する方法でした。これによって大量生産が可能になり、ロバートソンの類まれな販売能力も相乗して、彼のネジは大成功を収めました…カナダ国内で。

A Study in evolution of the Robertson Screwdriver
広告: “進化の研究” Collections Canada.

即座に、ロバートソンはこのアイデアに取り掛かり、借金をしてオンタリオ州に製造工場を開設し、注文に応じるようになりました。1915年までに、フィッシャー・ボディ(自動車製造工場)ではカナダでロバートソンねじを使ったフォード モデルT型ボディの製造を開始し、スロットねじで組み立てた車両と比べて1台あたり2.60ドル安くなりました。(車一台の小売価格が390ドルだった時代にとって、これはかなり重要なことです。) ヘンリー・フォードはこの経費削減を知り、全工場にロバートソンねじを導入するための契約(独占ライセンスを含む)を結ぶべく、全力を尽くしました。ロバートソンは自身の発明の支配権を手放したくなかったため、この取引を断り(おそらく「ふざけるな」と吐き捨てたことでしょう)、フィッシャー・ボディの顧客を失うことになりました。フォードは作業員がより速く、より効率的に取り付けられるネジにメリットを感じ、代わりにヘンリー・F・フィリップスと契約を結び、線引きが行われました。

今日、アメリカでネジとドライバーのデファクト・スタンダード(事実上の基準)となっているのがフィリップスであるように、カナダではロバートソンが最高位に君臨しています。カナダ人なら誰でも知っているように、ロバートソンはあらゆる面で優れたビットであり、国の誇りであり、ちょっとした自画自賛でもあるのです。

追記:私はフィリップネジで育ってきたアメリカ人ですが、つい最近、ショートしたコンセントの修理でロバートソンに出会いました。その頃、レセプタクル機能が合わさった溝付きネジとフィリップスネジとロバートソンネジを発見しましたが、その中でもロバートソンのドライバーを使うと一番効果が高いと分かりました。

Robertson screwdriver at work

MantaドライバーキットMahiドライバーキットには、ロバートソン(スクエア)ビットが全サイズ入っているので、家庭用配線をされる方やハードコアなカナダシンパの方は覚えておくとよいでしょう。

翻訳:Doi Midori