Valveの新しいゲームコンソールSteam Deck が登場しました。この興味深く、そしてリペアビリティの高いデバイスの完全分解ビデオをお届けします。

まず1番最初のネジにドライバーを当てる前に、友人であるCreative Electronにコンソール本体を送り、一足早く内部の様子を見てもらいました。その後、私たちは内部を徹底的に分解して調査し、これまで見たことのないような、注目すべき修理ポイントを見つけ出しました。
以下は、私たちが行った分解ビデオの大まかな内容です。(予め用意された撮影台本に基づいているため、内容とタイムラップスが完全に一致していない可能性があります)クリックすると各セクションにジャンプします。
はじめに
今、最もホットな新デバイスは、Steam MachineやSteam Controllerを生み出したValve社のハンドヘルド型ゲームPC「Steam Deck」です。
実のところ、昨年の夏にSteam Deckを注文しましたが、少し前倒しでValveがこの新モデルを提供してくれました。私たちの分解のためにサプライズをしてくれました。iFixitはValveと連携して、同社製品の公式パーツを販売提供しています。

このビデオ画像に見覚えがあるかもしれません。実はValveは数ヶ月前に自社で行った分解ビデオ を公開しています。彼らのビデオでは、幾つかパーツを取り外して、バッテリーはそのままの状態で残しています。そしてビデオ画面上部に、この作業を間違えると命を及ぼす危険があるかもしれないという、ちょっと大げさな怖い警告が表示されています。
ネタバレ:私たちは生き残りました。
一方で、どのハードウェアメーカーでも、このような透明性があれば素晴らしいでしょう。修理コミュニティが抱く疑問に対して、Valveは先頭を切って答えを教えてくれました。Valveの姿勢から、私たちは学ぶことができます。
X線画像

ゲームもインストールしていない発売前のSteam Deckを梱包して、すぐさまCreative Electronに発送してX線検査後、送り返してもらった大作業もお手の物と思われたら、それは大間違いです。私たちはプロ集団なので、要領が良いのです…iFixitスタッフは誰1人、同意してくれないでしょうが。しかしCreative Electronは、Steam Deckの内部を360度見渡せる素晴らしい画像を提供してくれました。このビデオでは(高解像度の)フルサイズで見ることができます。
内側に侵入します

さて、分解タイムです。Steam Deckの開口は簡単です。8本のプラスネジを外し、プラスチッククリップ数個をこじ開ければ……内部に侵入できます。面倒な接着剤や特殊ネジは使用されていません。作業はシンプルです。
Valveは、一度でもこの分解作業を行えば、落下ダメージに対するSteam Deckの耐久性が劣化することを警告しています。しかし、修理のために解体するのであれば、心配には及びません。
このDeck内部は、Valveが昨年10月に公開した発表前モデルのハードウェアに非常によく似ています。新しいネジの配置やスタイリッシュな黒の回路基板など、いくつかの違いはありますが、少なくとも分解の最初の数分間はValveが行なった分解に沿って進めます。
一方で、この内側にある全てのパーツに分かりやすいラベルが貼付されているので感激しています。基板、ケーブル、ネジ……もし、ここでネジを紛失しても、Valveのせいではありませんよ。
バッテリーの取り外し
いつものように、まずバッテリーの取り外しが最優先ですが、Valveはこのバッテリー作業をとても簡単にしてくれました。3本のネジを外してシールドを持ち上げれば完了です。この時点でバッテリーを取り外せましたが、この作業は少しだけ後回しにしましょう……。
サムスティックとドリフト

次にサムスティックについてお話ししましょう。両側のサムスティックは、3本のネジを外せば厄介な半田付けを外す必要もなく個別に取り出せます。ゲーム用ジョイスティックで、ドリフトを経験したことがない人はラッキーです。なぜなら、ドリフトの不具合はNintendo、Sony、Microsoftなど、ほぼ全ての最新型コントローラが抱えている問題です。ドリフトの原因については、PlayStation 5 DualSenseのドリフト問題の動画をご覧ください。(日本語字幕付き) 結論から言うと、ドリフトを解決する方法はサムスティックの交換です。ValveがSteam Deckのサムスティック交換を簡単にしたのは、正しい決断でした。さらに、交換用パーツの一般販売も計画しています。これが、ユーザーにとってどれほどの恩恵か想像してみてください。
サムスティックを交換したことがある方ならお分かりでしょうが、ここに特別な配慮があることに気づくでしょう。サムスティック上部と下側の回路基板を結ぶ小さな赤いワイヤが付いています。これはサムスティック上部の静電容量式タッチセンサーで、親指がそこに置かれているかどうかをSteam Deckが認識します。(それは誰の親指でも構いません。Steam Deckは、親指が置かれているかどうかチェックするだけです。)
ストレージ

サム(親指)といえば、このSSDに大きなサムズアップ(いいね)を送ります。交換可能なストレージは、近年発売された30万円以上もするMacBook Proにさえ搭載されていません。この完全モジュラーのM.2 2230 SSDは、ネジを一本外せば修理ができます。この薄い小さなシールドで覆われているのは、直下に搭載されたワイヤレス通信ハードウェアとの干渉を防ぐためのものです。
シールドを外した状態のSSDの様子を動画でご覧ください。Valve は私たちに最大コンフィギュレーションである512 GB のストレージを搭載した製品を提供してくれましたが、64 GB モデルでもM.2ドライブモジュールを搭載しています。また高速microSDカードスロットも搭載していますが、Steam Deck本体を開口せずに、利用可能なストレージを拡張できます。
ここまでが、Valveが先に行った分解でした。さて、次は…?
インプット
次にバネ状のトリガーボタンが簡単に外れそうに見えたので手をつけたものの、ネジを外したり、スパッジャーで力づくでこじ開けてもびくともしません。トリガーボタンは、小さなプラスチックのヒンジに挟まれています。これをこじ開けて解体できれば、あとはバネが勝手に外れてくれます。
次は、外側から内部に向かって作業を移すと、ボタン入力の小さな基板が出てきます。それぞれ4本のネジと13本のケーブルを外しますが、ここでもすべてラベルが貼られています。

その基板の下に搭載されているのはタッチパッド用ハードウェアです。両側のタッチパッドには、小さな回路基板が付いています。X線画像を詳細に見ると、ハプティックス(触覚)を動かす存在に気づくかもしれません。各タッチパッドには、触覚振動モーターに電力を供給するスピーカーのような小さなボイスコイルが付いています。また光沢のある長いバネが両側を蛇行し、タッチパッドの感圧ボタンの動作を制御しています。
サーマル
サーマルの仕組みについて興味がある方は、友達のGamers Nexusが詳細に解説しています。ノートパソコンやNintendo Switchの修理をしたことがある人なら、このデザインは見覚えがあるはずです。残り2本のネジを外すと、コッパー製ヒートパイプの片側が外れます。もう片方の端に貼られた、シャーシ内のエアフローを保つためのステッカーを剥がします。さらに2本のネジを外すと、ファンを取り外せます。
マザーボード
そして、AMDのカスタムAPUやMicronのLPDDR5チップを搭載したメインボードです。iFixitの素晴らしいリペアコミュニティが、既にこれらのチップ情報をiFixit.comに掲載していますので、詳細はそちらをご覧ください。
このマザーボードのお気に入りは、Deckに搭載されているさまざまなコンポーネントのブレイクアウトボードが多く使用されているため、マザーボード全体を交換する必要がないことです。つまり高額なパーツの交換が不要で、修理の選択肢が増えるということです。ただしUSB-CポートやmicroSDカードスロットはマザーボードにハンダ付けされているので、修理の際は注意が必要です。
バッテリー


さて、バッテリーの話に戻りましょう。Steam Deckのバッテリー交換は思うようには進みません。Steam Deckの初期レビューによると、90分近くゲームを続けると充電が必要になります。ヘビーユーザーは幾度にもわたって充電が必要になるため、必然的にバッテリー交換も必要になります。バッテリー交換のアドバイスは、熱を伴うアクシデントを防ぐため、作業前にバッテリー残量を25%以下まで放電させた後、十分な熱を当てて接着剤を柔らかくし、バッテリー下部の端からこじ開けることです。アンテナのハードウェアにご注意ください。
接着剤を柔らかくするために、高濃度イソプロピルアルコールの使用をお勧めしたいのですが、下に搭載されたマグネシウムフレームに穴が開いているため、そこから液体が漏れて真後ろのディスプレイを破損してしまわないか少し危惧します。バッテリー交換は、Steam Deckにとってアキレス腱だからです。
X線画像では、L字型で2つのバッテリーセルの輪郭がはっきりと確認できます。iPhone Xから搭載されているバッテリーのデザインに似ています。このバッテリーはスマートフォン用ではないのですが、40.04Wh(7.7V時5313mAh)の容量を有しています。
ディスプレイ
ディスプレイは最後に取っておきましたが、ディスプレイの交換はここまで分解する必要はありません。外側を少し熱し、吸盤カップを少し使えば、ベゼル下の接着剤を比較的簡単に切開できます。私たちの分解では吸盤ハンドルを装着するのに少し苦労しました。それはiFixitの製品レビューにも記載されていますが、特殊なアンチグレア(非光沢)エッチングガラスコーティング加工のせいかもしれません。あなたのマイレッジは異なる場合があります。そしてディスプレイが外れると、上部ベゼルから小さな環境光センサーを確認できます。
まとめ

では、Steam Deckの修理が必要になれば、一体どうなるでしょうか?他のレビュアーよりも詳細に分解を進めましたが、再組み立て後のSteam Deckは問題なく動きます。これはリペアビリティにとって重要な評価ポイントです。
しかしながら決定的なマイナス点もあります。バッテリーデザインは完璧ではありませんし、充電ポートがもっとモジュール化されていた方が良かったでしょう。
一方で、感心させられた点も沢山ありました。デバイス本体の解体作業はシンプルでわかりやすく、ほとんどのコンポーネントが平均以上のモジュール構造で、修理全体で必要なのはプラスドライバー1本だけです。そして、このガジェットのストレージ対策は、現在発売されている大部分のラップトップPCを抜いています。Steam Deckのリペアビリティスコアは10点満点中7点です。
さあ、今からゲームをロードして、早速お楽しみゲームタイムを始めます。この分解を楽しんでいただけましたか?Steam Deckの発売までの間、さらに詳しい情報を知りたい方は、上記リンクより搭載チップの詳細情報、 X 線高解像度画像、サムスティックのドリフトについての説明などをご覧ください。それでは、また次回!
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