Ask iFixit: イソプロピルアルコールについて話をしましょう。
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Ask iFixit: イソプロピルアルコールについて話をしましょう。

はるか遡ること、イソプロピルアルコールが流行した時代がありました。現在はパンデミックによる影響を受けて、グローバルサプライチェーンに深刻な負担がかかっています。入手しずらくなったり、通常の3倍の値段に跳ね上がっています。そこでイソプロピルアルコールとは何か、そしてそれに変わる代替品について詳しくお話しましょう。

私たちは、イソプロピルアルコール(別名:イソプロパノールもしくはIPA)をテック製品の分解や修理ガイドで使用し、このアルコールを信頼すると共に広く推奨しています。とてもシンプルなものですが、様々な方法で販売され、無数の用途に重宝されています。

当然ながら、「消毒用アルコール」と「サージカルスピリット(医療用アルコール)」は同じもの?という疑問は誰しもが浮かぶものです。電子機器の修理やクリーニングには何パーセントのイソプロピルが必要でしょうか?電子機器に他のタイプのアルコールを使っても良いのでしょうか?作業中にアクシデントで火花を出したら引火する可能性はあるのでしょうか?

様々な疑問について答えましょう。

イソプロピルアルコールとは?製造方法は?

イソプロピルアルコールは透明な薬品で、可燃性です。アルコール以外の香りはなく、ウォッカなどの蒸留酒に少し似た香りがします。ただしアルコール以外の香りはありません。メーカーは、醸造方法と同じような製造で、アルコールの強度を調節するため混合物を蒸留し、プロペン(それ自体は、プロパンや他の炭化水素から蒸し加熱)に水を加えて製造します。

イソプロピルアルコールは70%や90/91%の濃度が一般的ですが、60%のものやハードウェアストアや専門店では95〜99%のものも見かけることがあります。

電子機器の洗浄や接着剤の除去にイソプロピルアルコールを推奨する理由は?

手に入りやすく(少なくとも危機的状況でない時は) 比較的安価で、一本で以下のような大切な役割を担ってくれるのが特長です。

  • 油分や接着剤、はんだフラックス、残留物、指紋などの汚れを溶解します。
  • 多くのエタノール化合物とは異なり、オイルや痕跡を残さない。
  • すぐに蒸発する。(少なくとも華氏60度以上の空間で)
  • 換気の良い場所で作業すれば、無害に近い。
  • 60/70%の濃度でウイルスや細菌を殺菌する。
  • 水と完全に混合し、同時に蒸発するため、電子機器内でこぼれた液体の除去や腐食防止に最適。

手元にあるのは70%イソプロピルアルコールです。デバイスの洗浄に使ってもいいですか?

回路基板や他の電気部品に対して、濃度90%以下のイソプロピル混合物の使用は避けるのが最善です。単に何かメタルやプラスチック上の接着剤を洗浄する場合は、70%濃度のアルコールでも使用できますが、回路基盤やワイヤの上にこぼさないよう注意が必要です。なぜなら混入している水の量によって蒸発に時間がかかり、結果として作業終了後に不純物を残すかもしれないからです。

濃度が90%であれば、ほとんどの用途で問題なく使用できます。細かく言えば99%が最適かもしれませんが、場所によっては入手が困難な場合もあります。残りの10%はあまり気にする必要はありません。 

アルコール度数の高い他の化合物は?ネイルポリッシュリムーバーは代用できますか? 

成分がわかっているものにこだわることをお勧めします。つまりイソプロピルアルコールと水です。消毒用アルコール、変性アルコール、サージカルスピリッツなどの高濃度アルコール溶液には、他の化学物質や香りなどイソプロピルアルコールとは異なる性質を持つ物質が含まれていることが多く、基板やワイヤ周辺での作業では適切ではありません。パッケージに表示された有効成分がイソプロピルアルコールだけで、無効成分が水のみという製品でなければ、使用を控えた方が良いかもしれません。

特にマニキュアの除光液、つまりアセトンに当てはまります。アセトンは電子機器によく使用されている種類の接着剤に対して、イソプロピルアルコールよりも強力な接着剤リムーバーです。同時にアセトンは、多くの電子機器に使用されているABS樹脂を傷つけてしまいます。そのためiFixitで販売している接着剤リムーバーには、少量のアセトンを混ぜることで、接着剤除去の効果をより高めています。

ウォッカはどうですか?

ウォッカはもちろん、一般的なお酒はアルコール度数が40%前後のものが多いので、電子機器の修理には向きません。もし他にもアルコール濃度の高いお酒があったとしても、パーティーを盛り上げる為のカクテルとして取っておきましょう。エタノール/エチルアルコールとイソプロピルアルコールは違うものです。

イソプロピルアルコールはスクリーンにダメージを与えますか?ラップトップのキーは?デバイス内部のパーツは?

修理ガイドの中で、イソプロピルアルコールは使用しても安全な表面にのみ使用するよう表記されています。また、大量のアルコール溶液がこぼれるとダメージを受ける可能性があると警告しています。2013年モデルの15インチMacBook Proのバッテリー交換のガイドでは、私たちが販売する接着剤リムーバー(大半はイソピロプルですが、少量のアセトンも含まれています)が、ディスプレイの反射を抑えるアンチグレアコーティングや埋め込みスピーカーのプラスチックにダメージを与える可能性があることをお知らせしています。

一般的にメタルと回路基板は接着剤リムーバーの使用に対して問題ありませんが、ディスプレイ周辺の部品(特にスクリーン背面にあるLCDまたはOLEDバック)やプラスチック、および接着させておきたいパーツの周りにアルコールを流さないよう注意する必要があります。通常は慎重に作業を進めていくのが最善です。さらに望ましいのは、事前に少し作業内容を確認しておくことです。家電製品のクリーニングサービスを行うTechspray社は、イソプロピルアルコールに反応するものを素材ごとにリストアップしています。不明な場合、アルコールを大量に使用するのは控えましょう。(これは人生における一般的なルールと言えるかもしれません)

キーボードをクリーニングする手順の一つとして、イソプロピルアルコールをお勧めします。ただし、直接アルコールを塗布するのではなく、湿らせたタオルで拭くことをおすすめします。

多くの電子製品メーカーが、除菌液で拭いても大丈夫なデバイスを明確にしています。MicrosoftはSurfaceモデルのフェルト状のアルカンタラクロスを70%のアルコール溶液でクリーニングできると言っています。Appleは公式の「iPhoneのお手入れをする」ページのトップで、撥油コーティングを剥がさないようスクリーン周辺には特に注意しなければならないと公表していましたが、現在は70%のイソプロピルアルコール溶液を使うことが記載されています。使用中のデバイスのクリーニングやメンテナンス方法を検索できることは良いことです。

可燃性で有毒物のラベルが貼っています。どの程度配慮すべきでしょうか?

iFixitの大部分の修理ガイドは、電気回路に接触する作業前に、あらかじめバッテリーを取り出すことを基本にしています。バッテリーを取り外すと(バッテリーがない場合はデバイスのプラグを抜く)、誤って火花を発生させたり、イソプロピルを熱にさらす可能性が大幅に低くなります。衣服や敷物から発生する静電気によって、火災の原因となる可能性は極めて低いですが、常に予防するのが得策です。そこで注目したいのが、電源を切っても電荷を蓄えられる大型電子製品に搭載されているコンデンサです。ほとんどの修理では、コンデンサは問題になりません。

用途にかかわらず、家の中で作業をする場合、イソプロピルアルコールを他の蒸発する可燃性物質と同じように扱う必要があります。まず炎や高熱、火花にさらせないことです。使わないときはしっかり閉めておかなければなりません (同時に無駄な蒸発を防ぐことにもなります) また、換気の悪い密閉された空間では使用しないでください。


iFixit アンサーフォーラムで、常連のトップ回答者であるOld Turkeyさん、Mayerさん、そして多くの専門知識を教えてくれた方々に感謝します。イソプロピルアルコールについて、あるいは修理に関連する他の質問はありますか?次にどんなブログを書くかヒントになります。コメント欄でご質問いただくか、#AskiFixitのタグをつけてソーシャルメディアに投稿してください。

翻訳:Doi Midori